こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

シンポジウム「英語教育実践・政策におけるエビデンス」に登壇します。

2017年9月24日(日)に大妻女子大学で開催される日英・英語教育学会第23回大会シンポジウム「英語教育実践・政策におけるエビデンス」にパネリストとして登壇します。

詳細

第23回日英・英語教育学会研究大会(THE 23RD JABAET CONFERENCE)


私の提案要旨を掲載しておきます。

提案要旨

エビデンスベーストアプローチは、意思決定のためにエンピリカルデータの質(優良・不良)を明示的に議論する考え方である。しばしば方法論をめぐるハウツーの話と理解されてしまうが、実際にはすぐれて認識論的な議論が根底にある。つまり、メソッドX/研究デザインYを使うと「正しい知識」に到達できると考えられるのはなぜかという問いである。


本報告では、この認識論的な議論に焦点を当て、対比的に既存の英語教育学の問題点を示す。


従来の英語教育学は、メソッド・研究デザインに対する認識論的考察を多くの場合欠いている――「みんながこの方法でやっているから妥当だ」「みんながこういう根拠付けをしているから適切だ」という慣習に重きが置かれているだけのように見受けられる。この結果、意思決定――たとえば特定の教育プログラム、教授法、指導プランを選択するか否か――に関して周辺的な貢献しかできていないことを論じる。


具体的には次の論点を中心に検討する。

(1) エビデンス階層
経験的知見を、研究デザインおよび結果の分散の観点から格付けする考え方
(2) 因果推論
「相関から因果関係はわからない」と開き直るのではなく、相関関係に関するデータ(例、指導法X←→学力Y)から因果効果(例、指導法X→学力Y)を推論する工夫である。適切な推論のために、どのような研究デザイン・分析手法が必要か考える。なお、この論点は一般化することで、量的研究だけでなく質的研究・歴史研究にも適用可能である。

【参考資料】