著者であるホーンバーガーは、Michael Agar の "rich points" という概念を方法論の議論へ拡張し、methodological rich points と名付ける。その上で、言語政策/計画にかかわる現象における methodological rich points の可能性を考察している。
ここでの rich points とは、大雑把に言えば、多様な概念・現象が接触/衝突するため、既存の枠組みでは説明・解釈できず、だからこそリサーチ・理論を前進させる推進力を持つもの、という意味のようだ。
その重要性はわかるんだが、自分の発明した methodological rich points という用語に愛着が強すぎるのか、「で、何?」という読後感。この概念を採用すると世界はどうよくなりますか?(プラグマティズム)
タイトルは「適切なメソッドの選び方」なわけで、methodological not-rich points と比較しないと、何が適切で何が適切ではないのかわからないと思うんだけど・・・。
また、リサーチメソッドの選び方という概論にあたる章にもかかわらず(実際、1章では概論的な話はない)、「私信によれば、ジョシュア・フィッシュマンは "LPPビッグフォーの一人" と目されていた」とかどうでもいい情報がある一方で、リサーチの全体像が示されていないのも気になる。引かれている事例が著者の専門分野であるエスノグラフィーだけという構成はちょっとどうなんだろうか。
- Introduction
- LPP as an evolving theoretical and methodological terrain
- Methodological rich points
- Who researches whom in LPP?
- What do LPP researchers study?
- Where do LPP researchers carry out their research?
- How do LPP researchers collect analyze and interpret data?
- Why do LPP research?
- Conclusion
過去ログ
「言語政策リサーチメソッド」の検索結果一覧 - こにしき(言葉、日本社会、教育)
- 作者: Francis M. Hult,David Cassels Johnson
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