こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

6月23日,CELESで「英語力ランキング批判」という共同発表を行います

6月22-23日に富山大学で行われる中部地区英語教育学会で,奥住さん(埼玉大学)・浦野さん(北海学園大学)と「英語力ランキング批判:EF-EPI,TOEFLスコア,英語教育実施状況調査」という口頭発表を行います。内容は,タイトルそのまんまです。

タイトル

英語力ランキング批判:EF-EPI, TOEFLスコア,英語教育実施状況調査

要旨

近年、英語教育に関する議論において、英語力ランキングが頻繁に持ち出される。たとえば、EF社の英語能力指数(EF-EPI)やTOEFLスコアを流用した国際ランキング,あるいは,英語教育実施状況調査を流用した都道府県ランキングである。本発表では、こうしたランキングは、科学的・統計学的に正しくないばかりか、政策形成にとっても現場の実践にとっても負の影響が大きいことを論じる。先行研究にも、TOEFLスコアランキングのような「統計の誤用」を方法論的な観点から批判したものはある。しかしながら、この現象を広範な社会的文脈に置きながら、誤用の蔓延の背景およびその影響(主に、負の影響)を批判的に検討した研究はまだない。そこで本発表では、日本社会において英語力ランキングがどのように生み出され、どのように私たちに影響を及ぼし得るのかを批判的に検討する。具体的には、次の点を論じる。第一に、EF-EPIやTOEFLスコアを用いた国際英語ランキングがいかに統計学的に間違っているかを論じる。第二に、英語教育実施状況調査を用いた都道府県ランキングをめぐる,測定上および調査実施上の問題を指摘する。第三に、こうしたランキングが実際にどのような負の影響を及ぼし得るのかを、教育実践への影響、政策への影響、そして英語教育学コミュニティへの影響という3つの観点から検討する。

共著論文出ました:大学英語入試改革(四技能試験)の政策過程分析

私たちの論文が Current Issues in Language Planning から出版されました。筑波大院生の須藤爽さん,ブリティッシュコロンビア大学PhD Candidates の梶ヶ谷毅さん・青山 良輔さん,同大教授の久保田竜子さんとの共著です。

  • Terasawa, Takunori, So Sudo, Takeshi Kajigaya, Ryosuke Aoyama, and Ryuko Kubota. 2024. “Slogans as a Policy Distractor: A Case of ‘Washback’ Discourse in English Language Testing Reforms in Japan.” Current Issues in Language Planning, June, 1–24. doi:10.1080/14664208.2024.2355016.

https://doi.org/10.1080/14664208.2024.2355016

2022年のサバティカル(@ブリティッシュコロンビア大学)の成果のひとつです。

実は,共著論文としては,10年ぶり2本目。共著筆頭著者としては人生初です。共著マネジメントがとても勉強になりました。いろいろ失敗もしましたが(Googleドキュメントでファイルの書式がぜんぶ飛んだり…)。

内容はというと,2010年代後半の大学入試改革――いわゆる「四技能型外部試験」の導入をめぐる改革(結果的に導入失敗)――の政策過程を分析したおそらく初めての国際誌論文です。とくに,政策過程における「試験のウォッシュバック(波及効果)」言説の役割(主に悪影響)に焦点をあてています。

「ウォッシュバック」はもともとテスティング研究(妥当性検証)の用語ですが,教育プログラム改革(つまり意思決定)の言説にルースに概念拡張され,政策過程を混乱させたのではという分析です。その意味で,応用言語学における科学的(ディス)コミュニケーションの事例として読むことも可能です。

Draft Version (Academia.edu)

久保田竜子先生講演会(6月8日,土曜日)

2024年6月8日(土)の関西学院大学大学院言語コミュニケーション文化学会2024年度講演会において,ブリティッシュコロンビア大学の久保田竜子先生に講演頂きます。 タイトルは「言語教育における人種とことば:交差性に根ざす正義を目指して」。一般参加も可能とのことです(要申込)。是非お越し下さい。

www.kwansei.ac.jp

自宅を引っ越しました(住所更新のお願い)

私の自宅住所をご存知の方へ(おもに出版社の方?)。

2024年5月27日に新しい住所に引っ越しました。 マンション内引っ越しなので,マンション名までは同一です。 古い住所の部屋番号三桁に「100」を足して「1」を引くと新住所です(要するに+99)。

  • 例(架空の例)
    • 旧住所:399号室
    • 新住所:498号室

更新をよろしくお願いします。

寺沢

英語教育政策論 (3):英語教育政策をめぐるイデオロギー

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。

一連の記事はこちら

イデオロギー

  • イデオロギー ideology とは
    • 互いに類似した観念・アイディア (idea) を統合するもの(メタ観念)
    • 特定の人間観・社会観に由来するものであり,同時に,その方向が「善である」ことを前提にするもの
    • マルクス主義の用語として一般化し,その後,非マルクス主義的な文脈にも浸透。
    • (重要な例外もあるが)通常は,事実認識を装っているが,実際には,現実を反映しておらず,意図的あるいは無意識的に事実を歪めた認識,というネガティブなニュアンスがある。虚偽意識。

イデオロギーの再生産作用

  • プロセスレベル:イデオロギーが,特定の英語教育政策を進める。あるいは,ある政策を事後的に正当化する。
  • プロダクトレベル:ある政策(政策文書や施策)のなかにイデオロギー的表現が(まるで事実のように)埋め込まれる。
  • 循環作用:上記の結果,特定の人間観・社会観・教育観が自然化する(=自明な事実として受け入れられてしまう)。すると,ますますそのイデオロギーに偏った政策・実践・表現がまん延する

英語教育政策とイデオロギーの関係

便宜的に3つに分解可能(ただし,相互に大きく重複・影響しあっているため,「分類」することにはあまり意味がない)

  • 政策とイデオロギー
    • 社会はどう成り立っているか,社会をどう作っていくか,社会問題をどう解決していくか,等
  • 教育とイデオロギー
    • 学習者はどのように育つか,どのような指導・学習が効果的か,教員はどのように行動するか,等
  • 英語(英語教育・学習)とイデオロギー
    • 英語をなぜ学ぶ/教える必要があるのか(英語拡大)
    • 英語はどのように学ぶ/教えるべきか(指導法・指導者・学習開始時期)
    • 言語習得とはどういうものか(言語学習ビリーフ)

英語教育政策におけるイデオロギーいろいろ(各論)

英語教育で重要なイデオロギーとして以下のものがある。

  1. グローバル化イデオロギー
  2. 新自由主義イデオロギー
  3. ナショナリズムイデオロギー
  4. 英語帝国主義イデオロギー
  5. 英語帝国主義を正当化する諸イデオロギー
  6. 言語学習に関する誤信念

以下,個別に見ていく。

グローバル化をめぐるイデオロギー

英語教育政策に見られる「グローバル化イデオロギーの例

リストアップできないくらい膨大にある...。(重要文献:Seargeant, 2011. English in Japan in the Era of Globalization

  • 日本

  • 諸外国

    • グローバルトレンド(波及)としての早期英語教育(Enever, 2019)
    • グローバルビジネスの拡大(という認識)により,グローバルリンガフランカ(global lingua franca)に対する学習熱が拡大。
      • → 日本以上に,外国企業の進出度合いの大きい国,国際的取引の大きい国,ローカル言語の市場価値が相対的に小さい国などでは,この「グローバル英語=収益増」という認識=イデオロギーは強い

新自由主義 neoliberalism

  • 表面的な定義
    • 伝統的に政府の役割とされてきた領域(例、公教育、福祉、インフラ整備)を、市場(=人々の自由な選択)に移管すると,経済的効率性が向上し,社会全体が豊かになるとする考え方
  • 批判的な定義(ハーヴェイ, 2007)
    • グローバル資本家階級(多国籍企業等)の利益にかなう形で様々な制度(例、教育)が市場化されること
    • グローバル資本家にとって各国政府の規制は障害
    • 各国政府もグローバル資本家に逃げられては困るので,ドメスティックな制度の市場化・国際化を推進して,必死にアピールする
  • 基本的に,他者を批判するために用いられる用語であり,自称ではあまり用いられない。新自由主義者として名指しされる人が,自分のことを「新自由主義者」と呼ぶことは稀。

    • この点で,分析概念として完全に確立しているわけではないことには注意。むしろ政治的なキャッチフレーズ(罵倒語)としての側面や,「何でも説明できる」(つまり反証可能性が乏しい)万能概念=無能概念の側面もあるので,慎重に取り扱うべし。1
  • 新自由主義的な経済・社会に対応を余儀なくされる労働者 (新自由主義的統治 neoliberal governmentality)

    • 雇用の流動化に柔軟に対応するために,学び続けられるしなやかな個人。
    • 人的資本論の内面化。自分に投資することで自分の労働市場的価値を高める。(論理的コミュニケーションの能力とか感情マネジメント能力とか色々あるが)その一つが英語力。

英語教育政策の事例

注意すべきポイント

  • グローバル化」と違い,前述の通り「新自由主義」はある種の蔑称なので,自らそう名乗る政策はほぼゼロ。分析のためには,政策の背後にある意図を読み取る必要がある。
  • 市場化・自由化は,表面上は,個々の学校現場が自主的に進めた形が多く,その点で,個々の施策を,政府の政策的介入という枠組みで扱うのは難しい面もある。
    • ただし,政府介入によって,市場化・自由化という大きな流れが誘導されていることは事実である。
    • つまり,ミクロとマクロで評価が変わる。
      →個々の英語教育施策は現場の自律性の結果かもしれないが,他方,そう仕向けた構造的条件は政府の介入の結果。

事例

  • 市場化は初等中等教育よりも高等教育が顕著

    • 一部の教育(外国語教育,キャリア教育等)のアウトソーシング
    • アドミッション施策(入試)の一部をアウトソーシング化。
      • 例,英語外部試験で代替
    • (英語教育そのものにはあまり関係ないが…) 大学の国際化(具体的には国際ランキングの上昇のための外国人教員・留学生増)
  • 「企業進出しやすさランキング」を上げるツールとしての英語教育早期化

    • メキシコの公立小学校英語政策(Sayer, 2015)
      • グローバル市場を利する労働者(いわばグローバル人材)の創出を目的として、小学校英語が導入
      • ただし、学校リソースに予算を大規模に投入したわけではない(→小さな政府)。
      • むしろ,改革の「足かせ」になり得る教員組合を再編成(→「自由な教育」の矛盾。政府が積極的に介入して,自由化への障害と見なされたものを取り除く)
  • 英語教育政策自体が,新自由主義的な労働政策と親和的

    • 日本におけるグローバル人材育成
      • ただし,実際の議論では,論理的思考やタフネス,異文化対応力などの汎用スキルのほうが重視されており,英語力育成の優先順位は比較的低い。こうした複雑性を考慮しないと,「何でもかんでも新自由主義で説明する」という万能概念=無能概念の罠に陥りかねない。
    • 韓国の労働市場と英語力
  • 現代の (so-called) global workers の言語能力観

    • Kubota, R. and Takeda, Y. (2021), Language-in-Education Policies in Japan Versus Transnational Workers’ Voices: Two Faces of Neoliberal Communication Competence. TESOL J, 55: 458-485. https://doi.org/10.1002/tesq.613

ナショナリズム/ペイトリオティズム

  • ナショナリズム nationalism / ペイトリオティズム patriotism

    • 国益重視論:国力を増強すべきだ
  • 学校教育は,概して言えば,国家(and/or 社会)のため。

    • 有能な労働者(→経済成長)
    • 民主的市民(→社会の安定)
    • 秩序に対し従順な市民(→社会の安定)
    • 文化的一体感の醸成(→社会の安定)
  • 外国語教育は,本質的に,コスモポリタン的な志向性があるので,上記のナショナリスト的な目的から少しだけ(あくまで少しだけ)ずれる。

    • 「外国語(外国文化)」の教育に,ナショナルなものだけではカバーできない価値を託す
    • ただし,非ナショナルな価値の部分的・限定的取り入れ(和魂洋才,中体西用等々)
    • 経済的に強い外国語(典型例は英語)は,こうしたジレンマが生じにくく,よりストレートに国益的価値観と結びつく
  • 関連概念:文化本質主義

    • とくに日本社会の文脈においては,文化本質主義としての日本人論・日本文化論も重要(英語圏の文献でも Nihonjin-ron と表現されている2
    • 日本文化や日本人の行動様式は世界的に見ても独特だ(ポジティブな意味でもネガティブな意味でも)とする一連の言説群。
    • 文化本質主義・日本人論が,明示的に 英語教育政策文書に表現されることはあまりない。
      • ただ,何らかの「文化接触/衝突」が生じる文脈において,暗示的に述べられることはある。
      • たとえば,外国人指導者(および指導助手)を歓迎する文脈(典型的には JET Programme)や,訪日・在日外国人の増加を英語教育と結びつける文脈など。
      • 「暗示的」だけに,政策文書の行間(隠された意図)および余白部分(文書化されない政策背景)を読む必要がある。それだけに,狭い意味での実証性は一見,低下しがち(だからといって,「見えるところだけ見る」では分析にならないことも多いのでバランスが重要)。

英語帝国主義

  • 英語帝国主義とは:(言葉自体は昔からある3が)大衆化に貢献したのは,Phillipson's (1992) Linguistic imperialism. (OUP)
  • 暫定的な定義(注意:以下は寺沢の私見=オリジナル)

言語に関連する様々な価値判断を行う際に,英語をめぐる事象をそうでない事象よりも不当に優先・優越するものとして捉える。その結果,それが後者の事象に関わる人々を不当に抑圧すること,および,その状態。

  • 定義の注釈
    • 「言語に関連する様々な価値判断を行う際」→英語帝国主義の射程は広い。たとえば…
      • 英語母語話者の特権性(メディア表象,英語教師,情報アクセス,コミュニケーション効率等)
      • 英語使用者(L1, L2)の特権性(同左)
      • 学習言語(家庭内言語,個人の履修希望言語,教育機関の提供言語)として英語の選好
      • 使用言語(公共空間,社内,私的会話等)としての英語の選好。
    • 「不当に」:不正義・不公正を前提にする。
    • 「抑圧する」:価値判断に伴う単なる偏見だけでなく,実害が発生していることを前提にする。
    • 「~すること,および,その状態」:日本語の「主義」(志向性)だけでなく,「状態」も含意する(-ism という語の多義性)

政策事例

  • 英語教育推進の結果として引き起こされた数世代にわたる言語シフト(例,英語圏国内部の少数言語話者コミュニティ,シンガポール
  • 英語教育推進によって,他の言語や教科の教師が解雇あるいは配置転換される(冷戦崩壊後の旧共産圏)

英語帝国主義を正当化するイデオロギー

  • 英語帝国主義自体がイデオロギーだが,同時に,それを正当化する別のイデオロギーもある(深く関連しているが,一応独立していると概念化できるイデオロギー
  • 「正当化」がポイント。英語関連事象への優越を,自然で,合理的で,非抑圧的で,有益的なものとして理解させる理論・レトリック。

英語の言語社会学的位置づけに関するイデオロギー

英語話者に対する見方

  • 英語母語話者の能力
  • 英語話者と人種(白人性)

政策事例

英語教員採用に蔓延する母語話者主義

言語学習ビリーフ

  • 英語教育研究で比較的周知がなされている誤信念
  • 誤信念=イデオロギー
    • イデオロギーを「そう信じることで,結果的に特定の集団の利益になるもの」という比較的無難な特徴づけをするなら,単なる誤信念と利益誘導の関係は不明なことがあり,イデオロギーとは守備範囲がずれる場合がある
    • もっとも,より上位のイデオロギーと接続して理解可能なものもあれば,単なる誤信念としか言いようがないものもあるが・・・
  • 誤信念の例(上掲,大津本より抜粋)
    • 誤解1「英語学習に英文法は不要である」
    • 誤解2「英語学習は早く始めるほどよい」
    • 誤解3「留学すれば英語は確実に身につく」
    • 誤解4「英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である」
    • 誤解5「英語はネイティブから習うのが効果的である」
    • 誤解6「英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である」
    • 誤解7「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある」

政策事例

  • 英語教育の早期化(世界的トレンド)
  • 英語圏国(+英語プログラムを推進している大学)の留学生呼び込み政策

  1. ただし,新自由主義概念の無軌道な拡大に対する経済学からの批判: Rajesh Venugopal (2015) Neoliberalism as concept, Economy and Society, 44:2, 165-187, DOI: 10.1080/03085147.2015.1013356]
  2. Kawai 2007; Liddicoat, 2007; Kubota 1998; 2002
  3. 例,宮沢俊義 (1966) 「英語帝国主義」『世界』(242)

対応分析 ca() の出力を maptools() で自動的に描画するR関数(カテゴリ数が多い集計表向け)

対応分析 ca() の出力をデフォルトで出力しようとすると,カテゴリ数が多い集計表だと字が重なって何がなんだかわからなくなります。

# Rデフォの swiss データを使った描画
res.ca <- ca::ca(swiss)
plot(res.ca)

これを解決するためにmaptools()が便利です。 ただし,ca 出力はそのままは入らないので,多少工夫が必要です。 そこで,そのまま放り込めばそれっぽい描画になる関数を作りました。

関数

なお,以下の関数は,{maptools} のインストールが前提です。

install.packages("maptools")
ca2maptools <- function(ca.res,   CEXR = 1  ,CEXC = 3 , CEX = .7){

#座標情報抽出
xr <- summary(ca.res)$row[,c(" k=1"," k=2")]
 rownames(xr) <- ca.res$rownames
xc <- summary(ca.res)$columns[,c(" k=1"," k=2")]
 rownames(xc) <- ca.res$colnames
xrc <- 0.001*rbind(xr,xc)

# 図示 # library(maptools)
XLIM = c( min(xrc[,1]) - abs(0.1*min(xrc[,1]))   ,  max(xrc[,1]) + abs(0.1*max(xrc[,1])) )
YLIM = c( min(xrc[,2]) - abs(0.1*min(xrc[,2]))   ,  max(xrc[,2]) + abs(0.1*max(xrc[,2])) )
LOAD <- format(summary(ca.res)$scree[1:2,"values2"],digit=3)
XLAB <- paste("Dimension 1 (", LOAD[1], "%)",sep="")
YLAB <- paste("Dimension 2 (", LOAD[2], "%)",sep="")

plot(0,0,type="n",xlim = XLIM,  ylim = YLIM,  xlab=XLAB ,ylab=YLAB)
points(xrc
       ,cex=c( rep(CEXR, nrow(xr) )     , rep(CEXC, nrow(xc)) )
       ,pch=c( rep(17,nrow(xr))         , rep(16, nrow(xc)) ) 
       ,col=c( rep( "orange3",nrow(xr)) , rep( "lightcyan2" , nrow(xc)   ) ) )
maptools::pointLabel(xrc,rownames(xrc),cex=CEX)
}

冒頭と同様のデータを使った描画例

res.ca <- ca::ca(swiss)
ca2maptools(res.ca)

英語教育政策論 (2):政策過程

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。

一連の記事はこちら

政策過程の「理念型」モデル

英語教育政策の具体的な話に入る前に,まずは一般論から。


   問題認知  →← 政策形成 →← 政策決定 → 政策実施
アジェンダ設定


政策過程とは(最狭義では)政策がどう作られていくかの過程。ただし,検討が始まる前段階(問題が認知される前段階)や,実行に移す段階(=政策実施),実施後の評価の段階(=政策評価)も含めた長いスパンで理解することが多い。

問題認知・アジェンダ設定の段階

  • 一般的には問題(改善の必要性)が認知され、かつ、それが改革論議のテーブルに乗ることが、政策形成の第一歩。

政策形成・政策決定の段階

政策形成・決定過程に関する抽象的なモデル

  • 体系化の度合いによって異なる政策過程観

    • 整然かつシステマティックな政策形成
        ↓↑
    • 雑然かつカオスな政策形成(「ゴミ缶モデル」というものすら提案されている)
  • 合理的合理的決定をどれだけ仮定するか (*)

    • 合理性を前提にしたモデル:各政策案をリストアップし、その最終的成果を予測し、設定された政策目的に最も合致する政策案が最終的な政策になる。
        ↓↑
    • 非合理性を前提にしたモデル:政策にかかわるアクターは、政策全体の合理性は考えない(or 考えられない)。自身の利益(局所的合理性)にもとづいて動く。また、自身の損になるような抜本的改革は誰しもが受け入れにくい。こうした個々のアクター間の利害調整の結果、微修正型の改革(前例踏襲やインクリメンタリズム)になる。

(*) モデル=それが本当にそうなのかどうかはともかく、こういう風に世界が成り立っていると考えると現象をよりよく説明できるようになる仮定のセット

  • 政策決定への影響力、誰が手綱を握っているか
    • 集中的:特定のアクター(とくに首相、大統領、首長)の意志が反映されやすい
        ↓↑
    • 多元的:複数のアクターが一定の影響力を行使する。政策決定はそれぞれの綱引きで決まる。

日本の英語教育政策過程

アジェンダ設定

英語教育(EFL)については、以下の通り,大枠的な問題認知・アジェンダ設定はシンプルである。学習面では朗報(単純でわかりやすい)ともいえるが,研究面では悲報かもしれない・・・(研究上の新規性は小さいので)。

  • 問題:英語教育がうまくいっていない、現状では足りていない etc.(市民の英語力不足により様々な問題が生じている etc. )
  • アジェンダ:英語教育推進
  • 注)現代では稀だが,理屈上は「英語教育縮小・廃止」というアジェンダもあり得るし、過去には実際しばしば見られた。たとえば…1
    • 戦前日本の英語科縮廃論。
    • 旧植民地国における独立後の脱英語化・現地語へのシフト
    • ある政権の外国語・外国文化排斥:例,中国の文化大革命1966-1976,カンボジアポルポト政権

重要な注釈。サブイッシューであれば,問題認知・アジェンダも多様化する。たとえば,

  • 英語カリキュラム(授業時間数,開始学年 etc.)に問題を見出す
  • 英語指導法(コミュニカティブ,教授媒体 [CLIL/EMI] etc.)に問題を見出す
  • 英語教員の状況に問題を見出す
  • 英語教材を問題に問題を見出す

政策形成・政策過程

日本に関して言うと,伝統的に、英語教育政策は、文部(科学)省の独断場である(近年では例外あるが,後述)。その点でも,EFL政策は,他の言語政策にくらべてシンプルである。

  • 学習指導要領を媒介にした英語教育改革の例
    • 省(改革に向けた問題把握・アジェンダ設定)
      ↑↓
    • 審議会(プランの絞り込み)
      ↑↓
    • 答申原案の文書作成

アクター

審議のような比較的狭い過程におけるアクター

とりあえず国レベルの話(*)

  • 文科省官僚
  • 審議会委員などの外部有識者
    • 教員代表(校長など)
    • 教員団体(組合など)の代表
    • 地方自治体関係者
    • 教育系企業
    • 経済界代表
    • 学界代表(英語教育研究者・応用言語学者
    • その他民間有識者(芸能人、予備校講師、元アスリートほか)
  • 政治家(とくに与党政治家)
  • 首相・内閣・内閣府
  • 財務省
  • 経済界
  • 地方自治体(首長、教育長、教育委員会
  • 現場の教員。集合的組織としての教員組合
  • 民間教育団体
  • 教育系企業

(*) 自治体(首長→←教育委員会→←現場)レベルの英語教育政策形成は、具体的な研究が乏しく、実はよくわかっていない。

審議会の多元性・階層性

  • 文科省
    • 中央教育審議会
    • 中教審の下位部会
      • 教育課程部会
      • それ以外の英語系部会(例、「外国語専門部会」2003-2007、「英語教育の在り方に関する有識者会議」2014、大学入試のあり方に関する検討会議2019-2021)
  • 内閣レベル

以上から分かる通り,日本の英語教育は学校教育の枠内に閉じている度合いが高く,審議に関与する省庁は限定的である。他方で,その他の言語教育政策・言語政策は必ずしもここまで単純ではない。たとえば,日本語教育は、文化庁法務省厚生労働省,地方の首長部局(非教育セクター)も重要なアクターである。

事例:外国語活動導入(2000年代半ば審議、2008決定、2011施行)

政策過程:2000年代の小学校英語を事例に

政策過程全体に関与するアクター

  • 政府内審議
  • 政府外部の政治的アクターの会議(与党、経済団体、組合)
  • 政府外部の非政治的アクターの会議(学会、民間団体、シンクタンク
  • 地方自治
  • マスメディア
  • 市民=世論

英語教育政策過程のアクター(日本の場合)

誰が政策決定の手綱を握っているか?

結局,「時期や政策による」が答えだが,一定の傾向はある。

  • 時期
    • 1980年代以前は文部省。ただし改革志向というよりメンテナンス志向。英語教育関係審議会の存在感は薄い(「審議会=官僚の隠れ蓑」論)。
    • 90年代-2000年代は概ね文科省。英語教育関係審議会について同上。
    • 2010年代は首相主導の性格が強まる(via 教育再生実行会議)。英語教育関係審議会については同上。
  • 政策の射程
    • 改革の具体的な面(例、授業時数、教材、教員)に関するものは、文科省(そして審議会も)の守備範囲。
    • 改革の大綱的な面に関するものは、より上位のアクターの守備範囲。

審議コントロールの具体的事例(1):外国語活動必修化

  • 詳細は『小学校英語のジレンマ』4章
  • 審議の舞台は、中教審教育課程部会の内部に閉じていた
    • 審議前半の中間まとめまで:必修化推進派で委員を固める
    • 審議後半:多様な意見を、文科省事務局の舵取りで、無難に整理→軟着陸

審議コントロールの具体的事例(2):小学校英語教科化

  • 詳細は『小学校英語のジレンマ』5章
  • 審議の舞台は、首相部局(および与党自民党の教育会議)と中教審に分立。
    • 首相サイドが大枠を決める
    • 文科省中教審は、そのプランを具体化するだけの下請け的存在に

  1. EFL推進というアジェンダ設定はあまりに遍在しているので,むしろそれに当てはまらないような逸脱事例を検討したほうが,理論的には有意義,,,かもしれない。このような理論形成に貢献する逸脱事例のことを,事例研究用語で「レバレッジ」と呼ぶ。