こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

マジメな書き物

臨界期仮説とSLAニワカによる教育論のコンタミ

実は私、卒論(の一部)で、L2臨界期仮説に関するレビューをやったりした。その頃からの疑問が、なぜ日本の英語教育研究者は、教育とはほとんど関係ない臨界期仮説をすぐに紹介したがるのかという点だ。そういえば一昨年出た(色んな人が引用する)この本も…

エンピリカルな「英語帝国主義」研究の方法論整備

最近、英語帝国主義(的な議論)の整理をしている関係で以下のような記事を見つけた。 私自身は、彼らの「言語教育はすぐれて政治的である」という主張は理解できるが、「国際英語論までもアングロサクソンの世界支配に貢献している」との主張は行き過ぎと考…

英語力の有無を「格差」と呼ぶならば押さえておくべき点

以下の記事を枕に 「英語格差」を乗り越えるための新常識〜植えつけられた苦手意識はこう取り除け!(鳥飼 玖美子) | 現代ビジネス | 講談社(1/5) 国際共通語である英語が分からないと重要な情報を理解できず情報弱者になる。東北大震災の時も、英語でイ…

グローバル人材育成を抽象的に考える人は英語教育を重視せず、具体的に考える人は英語教育に焦点化する

要点は上のタイトルがすべて。 *** 「英語ができてもグローバル人材とは呼べない」という主張をよく聞く。もちろんそれはその通りなのだが、実は「グローバル人材=英語がよくできる人」と考えている人はほとんどいないだろう。その点で上記の発言は、ス…

英語教育学におけるエビデンスの格付け

2016年3月13日(日)に開催される日英・英語教育学会2015年度(第15回)研究会で「Evidence-Based Education Policy と日本の英語教育学」という題目で講演する。ここはそのメモ帳。なお、学会ブログにはまだ詳細は載っていない(1月9日現在):http://blog.goo.…

脳科学のサンプリング問題

「文系学者の脳科学に対するコメントなんて信用できるか(笑)」などと言っている権威主義者の皆さんもいると思うので(その気持ちはわからなくもない)、「理系」の学者によるコメントもあったので紹介しておきます。調査観察データの統計科学―因果推論・選…

「日本文化はハイコンテクスト」には実証的根拠がない

要旨 「日本文化はハイコンテクストだ」ってのを提唱した人はそもそもたいした実証的根拠を示してなかった。そればかりか、その後の実証的な追試によって否定されてしまってる。しかし、この事実は意外と知られずに「日本文化はハイコンテクストだ」論はしぶ…

JASELE2015感想、殴り書き(英語教育学の発展を願いつつ)、その1

(感想と言ってもほとんど以前からの問題関心の繰り返しなので、以前に書いた文章のリサイクルでお送りしております) テキストマイニング 学術研究でテキストマイニング・計量テキスト分析が輝くのは人間の意味処理能力では不可能なほど大量の文字情報から…

インドの人口の8割は英語が話せない

英語が公用語として使われていると聞くと、国民の多くが英語を話すというイメージを抱く人も多いだろう。 実際、日本でも2000年に英語の第二公用語化が論じられたことがあり、この議論でも英語公用語化は日本人総バイリンガル化と同一視されていた(「21世紀…

授業参観を「言語政策研究」と呼ぶのはやめてほしい

夏の学会シーズンが始まる前に(特定の人を批判していると思われないために)一般論として言っておきたいこと。それは、外国語教育系の学会で「言語政策」「外国語教育政策」とラベルを付けられている研究に関してである。 外国の英語教室を授業参観したのを…

英語教育学における2つの「科学」(対話篇)

対話形式(架空対話形式)にしたほうが専門外の人にも読みやすくなるという噂を聞いたので、実験的に以下の記事を対話にしました。 英語教育学における「科学」の意味 - 【旧版 2018年3月まで】こにしき(言葉、日本社会、教育) 英語教育と科学 太郎:あ、…

英語教育学における質的研究の難しさ

先日書いた以下の記事の続き。 今年度から英語教育学を志すM1の皆様へのメッセージ - こにしき(言葉、日本社会、教育) 前回の記事ではちょっと「統計びいき」過ぎる記述だったかもしれません。先日の記事で「その問いが統計分析でできるかどうかまず考える…

他教科に比べて英語がかなり特殊な点

結論からいうと、「生活上のニーズをほぼ等閑視したまま義務教育課程のメンバーになれたのは英語科だけ」という話です。ですから、この結論に違和感を感じない人は(そして興味を感じない人も)、以下を読む必要はとくにありません。 前口上 以前、『シノド…

占領期日本における英語教育構想

読了。勉強になった。 広川由子 (2014). 「占領期日本における英語教育構想」『教育学研究』81(3), 297-309.新制中学校(ということはつまり義務教育課程)に、なぜ外国語科(英語科)が導入されたのかを検討した研究。戦前の高等小学校(←事実上、新制中学…

英語教育学における「科学」の意味

昭和40年代、英語教育の「科学化」運動があって、英語教育学が誕生したというのは関係者にはそこそこ有名な話だと思う。この科学化・学問化運動の頃に書かれた論文を読んでいると、当然ながら「科学」というスローガンが連呼されている。私は学生の頃から、…

指導要領「英語は英語で」・教育プログラムの評価・エビデンス

ask.fm のやりとりを転載・編集してちゃっかりエントリにしてしまうのコーナー!質問文は私が読みやすいように手を入れています(つまり、対話形式の創作記事だとお考え下さい)。オリジナルのQ&Aはこちら:http://ask.fm/tera_sawa 指導要領の法的性格 Q 現…

日本社会における英語とジェンダー(文献リスト)

日本社会を文脈にした「英語学習とジェンダー」に関して、今まで調べた範囲でリスト化しておきます。 このトピックは研究者じゃない人でもたまに触れたりするのに、意外にも、実証研究は多いわけではないんですね。 リストは随時更新します。「こんな文献も…

【方法論】外国語教育研究における歴史的アプローチの位置づけ

外国語教育研究の方法論・リサーチメソッドという話が、以前からよく聞かれる。少し前のテキストブックには、ほとんど統計の話で埋めつくされているものもあったけれど、最近では「量的/質的」といった二分法をはじめとして、リサーチメソッドをより全体的…

批判的応用言語学の「批判的」に関する誤解

私の半径数メートル以内では「批判的応用言語学」(Critical Applied Linguistics: CALx)というのが以前から話題になっている。以下、強調する必要がある場合を除き、CALxと書く。 日本ではけっこうマイナーだと思うんだけれど、最近ではついに岩波新書にも…

英語教育学と「社会的意義」

ちょっとした実務上の事情で、関東甲信越英語教育学会(通称KATE)の学会誌と、大学英語教育学会のJACET Journalに過去5年の間に掲載された全論文を Introduction だけ 読んだ。Introduction ってのは、 つまり、論文の第1節で、「はじめに」とか「問題の所…

「良識派」英語教師とナショナリズム、その4(リサーチクエスチョン+用語の定義)

書いている途中の論文(非査読)を、コピペするコーナー! その1:「良識派」英語教師とナショナリズム、その1(「はじめに」) - こにしき(言葉、日本社会、教育) その2:「良識派」英語教師とナショナリズム、その2(先行研究紹介) - こにしき(言…

「良識派」英語教師とナショナリズム、その3(先行研究の問題)

書いている途中の論文(非査読)を、コピペするコーナー、第3弾! その1:「良識派」英語教師とナショナリズム、その1(「はじめに」) - こにしき(言葉、日本社会、教育) その2:「良識派」英語教師とナショナリズム、その2(先行研究紹介) - こにし…

「良識派」英語教師とナショナリズム、その2(先行研究紹介)

昨日の続きです。 「良識派」英語教師とナショナリズム、その1(「はじめに」) - こにしき(言葉、日本社会、教育) 先行研究3つのパタン では、日本の英語教育とナショナリズムを取り扱った先行研究を検討したい。前述のとおり、このテーマは、主に日本の…

「良識派」英語教師とナショナリズム、その1(「はじめに」)

書いている途中の論文(非査読)を、コピペするコーナー! 英語教育とナショナリズム ナショナリズムにとって、教育はきわめて重要である。教育、とりわけ学校教育は、国民国家にとって、児童生徒に国民意識を植えつけるという非常に重要な役割を担う装置だ…

「仕事と英語」言説と欠陥調査、その2

先日のこの記事のつづき: 「仕事と英語」言説と英語教育、そして「欠陥」調査 - こにしき(言葉、日本社会、教育) ちなみに、このシリーズは、2011年に出たわたしの論文の一部を大幅に書き直してお送りしております。 寺沢拓敬(2011)「英語ができれば、…

「仕事と英語」言説と英語教育、そして「欠陥」調査

「これからの時代、社会に出たら、英語力が絶対必要だ」 最近では、ごくありふれた発言である。この手の発言は、表現に多少の差はあっても、仕事において英語力がいかに重要かを強調するという点で、ビジネス言説である。たとえば『プレジデント』(プレジデ…

「英語は日本人全員に必要か?」

しばらく前、ある「国民投票」がインターネット上で少し話題になった。 英語は日本人全員に必要だと思いますか? 経済のグローバル化が進展する現在、日本人が英語を話せるようになる必要性が年々高まっていると言われています。(中略)一方、多くの日本人…

ジム・カミンズの言語能力理論と日本の第二言語教育

ジム・カミンズ(Jim Cummins)の理論と日本の第二言語教育 - Togetter 先日、バイリンガル教育の理論的基礎を築いた心理学者ジム・カミンズ氏(Jim Cummins)が来日し、ツイッター上でも氏の理論に関する議論が盛んに行われています。英語教育でも、カミン…