こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

日本社会における英語とジェンダー(文献リスト)

日本社会を文脈にした「英語学習とジェンダー」に関して、今まで調べた範囲でリスト化しておきます。
このトピックは研究者じゃない人でもたまに触れたりするのに、意外にも、実証研究は多いわけではないんですね。


リストは随時更新します。「こんな文献もある」といった情報をお持ちのかたは、コメントしていただけるとたいへんありがたいです。



著書(研究者によるもの)

英語で書かれた本ばかりですが、これは偶然じゃありません。日本の英語教育学には、こういうテーマを扱う学術システム・知識システムが整備されていないからです。(その証拠に、以下で唯一の和文文献の著者・北村さんは、英語教育学者・応用言語学者ではありません)。

Kimie Takahashi Language Learning, Gender and Desire

オーストラリアに語学留学に来た多数の日本人女性の西洋への憧れ、恋愛、そして葛藤。

北村文 『英語は女を救うのか』

社会学者による、女性英語学習者・英語使用者へのインタビューにもとづく、アイデンティティの分析。他の研究と比較しても、ジェンダー論・フェミニズムへのコミットメントが強い印象。

英語は女を救うのか(双書Zero )

英語は女を救うのか(双書Zero )

Laurel D. Kamada Hybrid Identities and Adolescent Girls

Hybrid Identities and Adolescent Girls: Being 'Half' in Japan (Critical Language and Literacy Studies)

Hybrid Identities and Adolescent Girls: Being 'Half' in Japan (Critical Language and Literacy Studies)

Karen Kelsky Women on the Verge

西洋/白人男性/英語に憧れ、日本/日本男性を忌避する女性たちへの長期に渡るフィールドワーク

Women on the Verge: Japanese Women, Western Dreams (Asia-Pacific)

Women on the Verge: Japanese Women, Western Dreams (Asia-Pacific)


論文

Piller & Takahashi. 英語への情熱

Piller, I. & Takahashi, K. (2006). A passion for English: Desire and the language market. In A. Pavlenko (ed.), Bilingual Minds: Emotional Experience, Expression and Representation. Clevedon, UK: Multilingual Matters, pp. 59-83.
http://languageonthemove.com/downloads/PDF/piller_takahashi_2006_akogare.pdf


Keiron Bailey. 2006. 英会話ワンダーランド

http://www.envplan.com/abstract.cgi?id=d418
Bailey, K. 2006. Marketing the eikaiwa wonderland : ideology, akogare, and gender alterity in English conversation school advertising in Japan. Environment and Planning D: Society and Space, 24(1), pp. 105-130.

小林葉子 2005. 「エンパワメントとしての英語力とジェンダー

http://ci.nii.ac.jp/naid/120001120477

Kobayashi, Yoko. 2007. Japanese working women and English study abroad

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1467-971X.2007.00488.x/abstract


我田引水で恐縮ですが拙稿も。
  • 寺沢拓敬 (2014)「日本社会における英語使用の必要性 ---社会統計に基づく英語教育政策/目的論の検討」吉島茂編『外国語教育Ⅴ−一般教育における外国語教育の役割と課題−』朝日出版社 pp. 231-250.
  • 寺沢拓敬 (2011)「英語ができれば、英語が必要な仕事に就けるのか?―日本の労働市場の不平等性と英語使用」『社会言語学』11: 27-47.
    • これら2つの論文のタイトルにはジェンダーの文字はありませんが、ジェンダーをキーワードのひとつとして分析しています。

本(ルポルタージュ等)

安井京子『女は英語でよみがえる』

タイトルが素敵。実際はいろいろ大変な事情があったようで、そんなに「よみがえ」ってない。

女は英語でよみがえる―語学で再就職する必勝ガイド

女は英語でよみがえる―語学で再就職する必勝ガイド

富岡多恵子『「英会話」私情』

現代とは異なる、戦後前期の「英語と女性」の歴史を考えるうえで必読

「英会話」私情 (集英社文庫)

「英会話」私情 (集英社文庫)

宮本美智子『わたしは英語が大好きだった』

同上。

わたしは英語が大好きだった (文春文庫)

わたしは英語が大好きだった (文春文庫)

川恵美『彼女がニューヨークに行った理由―OL留学症候群』

1980年代以降の留学ブームを考えるうえで。

斎藤聖美『女の出発―ハーバード・ビジネス・スクール』

これも1980年代に日本を旅だった女性の記録。


以下は、きちんと読んでいませんが、知人からタレコミがあったもの。これから確認します。

吉原真理 『ドット・コム・ラヴァーズ』

多賀幹子『帰国子女の就職白書』

多賀幹子『ニューヨークで夢探し』

雨宮和子・大井恭子『アメリカを暮らす』

アメリカを暮らす―カリフォルニアとロングアイランド (旺文社文庫)

アメリカを暮らす―カリフォルニアとロングアイランド (旺文社文庫)




番外編 ――愉快な(愉快じゃない)ミソジニスト英語教育学者たち

英語帝国主義批判における女性観 ―津田幸男 保守的ジェンダー観で日本女性の英語学習を「英語帝国主義」とぶったぎる

英語支配の構造―日本人と異文化コミュニケーション

英語支配の構造―日本人と異文化コミュニケーション