こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

「エビデンス」という言葉は専門用語

EBM関係の人が以下の様なツイートをしていた。

医学/医療関係者が言う「エビデンス」は専門用語化してるものなので、単なる「証拠/根拠」という意味で横文字使ってるわけではない
https://twitter.com/y_tambe/status/649729604312141824


まったくその通りで、これで(納得するひとならば)だいたい終了である。問題は納得しない人(あるいは納得せずに日常語の意味にひきずられたまま批判を続けてしまう人)がいることである。


エビデンス」用法の特殊性は以下のスライドの7〜10枚目を参照。



同じ言葉が日常語としても専門用語としても使われているが、両者はまったく意味が違う(正確に言えば、専門用語のほうが意味がはるかに限定されている)というのはよくあることだ。たとえば、「相関がある」とか「状況証拠」とか。


今まで(主にツイッターやFBで)目にしてきたエビデンス批判のだいたい7, 8割が

  1. エビデンスという横文字でカッコつけてるだけ
  2. エビデンスじゃ人間は語れない

のどちらかであって、こうした批判は「専門用語としてのエビデンス」とは無関係である。これらを早い段階で無視して残りの2, 3割の批判と正面から向き合うべきと思う*1


ただ、誤解をさせる用語法を使っている側にもそれ相応の責任があるわけで(とくに概念や用語がまだ浸透する前の段階では)、僕はエビデンスという言葉よりは「因果効果」あるいは「科学的に信頼性の高い因果効果」という言葉を冗長にならない程度に使うようにしている。

*1:ただし、こういう不毛な批判を権威がある人がすることもあるので、無視することには多大な人間力が必要である。したがって、人間力を磨くことも大事だ。