こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

韓国の英語教育格差の実態および政府の対応 (カレイラ, 2012)


カレイラ松崎順子 (2012).「韓国における貧困と英語力の関係 ―EBSの挑戦―」松原好次・山本忠行編『言語と貧困―負の連鎖の中で生きる世界の言語的マイノリティ―』(pp. 158-171)明石書店


韓国における英語教育格差の実態および、それに対する韓国政府の対応について概観した論文。概観とはいっても、EASS-2008(East Asian Social Surveys)の分析結果などもあるので、おそらく「世界初」の知見も含まれている(少なくとも日本語文献では初めて)。


EASSの分析結果によれば、「月収」(おそらく現在の本人収入)と英語力の自己認知はかなり強く関連しているということが示されており、英語力の階層差の一証左と言えるだろう。


その分析結果は、紙幅の制約からか表形式で提示されていた。「余計なお世話」感が満載だが、記載されている数値をもとに図示してみた。自己報告の英語力5階級、それぞれ読解、会話、ライティングと、収入4階級をクロスさせたモザイクプロットである。ぱっと見ても、(社会的事象のクロス表としては)比較的強い関連が見られることがわかる。ついでに、クロス表がどれだけ歪んでいるかを表す指標(つまり効果量)であるクラメール係数を算出してみたところ、読解・会話・ライティングはそれぞれ、0.244, 0.236, 0.228 だった。様々な社会階層差のなかでも、どちらかといえばはっきりした差だと思う。


同論文には、こうした英語教育格差への対応策として、英語村、放課後学校、EBS(教育放送)の教育番組が紹介されている。これらも勉強になった。以前のブログで取り上げたJeon (2012)の「ネイティブ教師派遣事業」(TaLK)との関係なども気になる。



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