こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

山田治徳著『政策評価の技法』

政策評価の技法

政策評価の技法

ある政策が総合的に見て成功したかどうかを評価する方法論の教科書。
後半部分の調査ハウツーは社会調査法の教科書とかなり重複する部分があるが、前半は(当然ながら)政策評価に焦点化していて、社会調査・世論調査(おもに計量手法)を政策評価で活かすための理論・豊富・注意点が述べられている。


「まえがき」にあった、「アメリカに官費留学してショックを受けたこと、それは、霞が関政策評価手法は、アメリカの連邦政府・州政府所か、地方の市役所の政策評価にも、その科学性・合理性の面で劣ることだった(おぼろげな引用)」という体験談は重い。(当然ながら、私の念頭にあるのは教育政策)


内容紹介は以下のとおり。

本書の目的は、政策評価に必要な知識をやさしく解説することにあります。したがって本書を読むためには、高度な知識は必要ありません。また独学でも理解できるように工夫したつもりです。統計学のところで数式が出てきますが、微分積分など高度な数学の知識はまったく必要ありません。たし算、ひき算、かけ算、わり算ができれば十分です。


ところで、次のような内容紹介を読むと、外国語教育研究で一般的に行われる手法とかなり似ていると感じるだろう。

政策評価の考え方、準実験計画法、標本調査、データの差の検証などをテーマに、公共政策学・社会調査・統計学を駆使して、政策評価に必要な知識及び関連各分野のエッセンスについてまとめる。

「実験」状況(すなわち何らかのランダマイゼーションをかませられる状況)を設定できる少数の例外はのぞき、外国語教育研究で扱う場合は、厳密な意味での「実験」にはならない。そういう事情は、公共政策も同じ。人々や社会をモルモットにするわけにはいかないので、政策を評価するためには、準実験や社会調査をせざるを得ない場合がほとんどである。なるほど、外国語教育研究も広い意味での「政策(どういう目的をもち、どういう効果を期待して指導を行うか)」を評価しているのである。


いずれにせよ、教育政策・外国語教育政策が、やりっぱなしではなくて、きちんと評価されるような土壌になればいいなーと切にねがいながら読んだ。