全国英語教育研究団体連合会(通称、全英連)という研究団体があります。
日本の英語教育、とくに中等教育における英語実践・政策・理念に多大な影響を与えてきた団体で、その端緒は、戦後占領期(1950年)にまでさかのぼる、歴史の古い団体です。
たとえば1950年代初めごろには、公立高校の入試科目には英語が含まれていませんでしたが、英語科も選抜科目に加えるように運動を展開し、大きな成果をあげたことが知られています。
ただし、同団体の会誌の発刊がスタートするのは1963年からであり、1950年代の動向について、克明に記録してある資料は必ずしも多くはありません。ここでたいへん参考になるのが、1963年の同会誌第1号から11号まで毎年連載された、木村武雄氏による「全英連の記」です。
創立20周年を記念する特集の中で、著者の木村氏自身が発刊の経緯を振り返っているので見てみましょう。
昭和38年、全英連会誌創刊号が企画された時、当時の出版部長杉安太郎氏(現電機大学教授)から、全英連は第10回大会(昭和35年、都立日比谷高校)以後は大会の紀要が出ているので、全英連の動きもわかるが、それ以前のことは正式に記録されてないので、結成当時からのことをできるだけ詳しく会誌に連載しておくようにとの注文があった。そこで後世何かの参考にでもなればと思い、手元のメモと印刷物などを参考にし、そして最初にも断わっておいたと思うが、私事私見を織り混ぜながら、「全英連の記」と題して毎号の会誌に載せ、どうやら第7回名古屋大会までを終わった。初めはもっと簡単な仕事だろうと思ったのだが、いざペンを取り上げてみると、あれもこれもと欲が出て、結局繁簡よろしきを得なくなったかもしれない。
木村武雄 1971 「ひとつの思い出」『全英連会誌』第9号、p. 9 [復刻版:p. 563])
以下、同会誌の見出しを掲げます。見出しだけをみても1950年代、どのようなトピックに関心がもたれていたか見て取れます。なお、第1回から最終回まで、見出しには連番が降られています(1. 〜 49.)。なお、実際の記事の検討は、会誌原本ではなく、『全英連会誌復刻版』を利用しました。貴重な資料の復刻をどうもありがとうございました。