こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

応用言語学における政治経済(Block, 2017)

以下、Political economy を「政治経済」と訳す。


Block, David. 2017. "Political Economy in Applied Linguistics Research." Language Teaching 50(1):32-64.
http://www.journals.cambridge.org/abstract_S0261444816000288

とくに、面白かった点:


複言語主義そのものにはもちろんネオリベラリズムとは独立だと思うが、たしかに担いでいる人たちを考えると、むべなるかなという気はする。日本だけでなく欧米でも、複言語主義を叫ぶ人のなかには、少なくない規模で、政治経済に関する知識があまりなく、素朴「教育ファースト」主義、素朴「語学愛」の人がいると思うので、この指摘はかなり重いように思う。

1. Introduction

2. Political economy

経済思想史の基礎的な話 → 応用言語学にも政治経済論的転回 (political economy turn) が来てますよ!と主張

3. Neoliberalism as focus of attention in contemporary political economy

ネオリベラリズム小史

4. Neoliberal effects to consider

ネオリベラリズムの種々の作用、とくに個人主義化作用は、応用言語学でも他人事ではない。

5. Class

社会階級――一見、現代では忘れ去られつつある古い概念だが――という理論枠組みが再び重要になりつつある

6. Issues arising in AL from a political economy perspective

6.1. Examinations of education, work and leisure in AL

教育、仕事、余暇活動における言語の位置づけが PE の作用によって変わって言っているという話。たとえば…

  • ネオリベ的市民形成→日本の「グローバル人材」のイメージに近いだろう
  • 言語の商品化
  • 労働における阻害(例、コールセンター)→日本ベンチャー企業発のスカイプ英会話なんかもこれと無縁ではないだろうね
  • 言語経済学
  • フェアクラフ&ホルボロウ、CDAにおけるマルクス主義の意義、明示(←→ポモCDAと対置)
  • Tourism study: commodification of culture
6.2. Examinations of social class in AL

社会階級と言語に関するいろいろな研究

  • Pennycook: 「国際語=英語」が class dialect となって特定の class を排除する
  • Vandrick: 「エリート留学生」という視座 'privileged international students' 'students of the new global elite'
6.3. Language teaching and learning

Plurilinguilism/multilingualism とネオ・リベラル人間観(人材観)の親和性
→たしかに複言語主義という看板でいろいろヒューマニスティックなことが言われているが、ちょっと危うく感じるときもある。学習に駆り立てるイデオロギーに対してあまり危機意識がないというか。

SLA/SLL: 言語習得へのアクセスの問題

Gray & Block (2014): 70s・80sの教科書には、労働者クラスの英語話者がしばしば登場してきたが、いまやグローバルコスモポリタンばかり。

7. The future of political economy in AL

ontology & epistemologyについていうと、政治経済の研究者は、 いわば ”critical realism” ともいうべき立場が一般的。エンピリカルな点を重視しており、その点で、ポストモダン系CALxと対立する。