LEP読書会 第2回で読んだ論文。
- Marieke Vanbuel & Kris Van den Branden (2021) Each primary school a school-based language policy? The impact of the school context on policy implementation, Language and Education, 35:1, 42-59.
ベルギー・フランデレン地域における school language policy という施策が、各学校でどれだけ実施されるかという問い。典型的な implementation studies である。分析法は、計量と質的のミックス。
RQ
SLP施行 ← 「学校の文脈」という変数
分析モデル整理
ちょっと分析の中身がややこしい(分析手法の問題というより、ぜんぶ文章で説明してあるため)ので、図式化して整理する。
サンプル | 結果変数 | 学校文脈+個人変数(原因変数) | |
---|---|---|---|
学校単位 | SLP有無 | ← | 非オランダ語話者、学校規模、教員の平均年数 |
管理職チーム単位 | チーム献身認知 | ← | 非オランダ語話者、学校規模、教員の平均年数 + 教員個人の経験年数 |
チーム反省性認知 | ← | 同上 | |
阻害要因認知 | ← | 同上 | |
教員単位 | 個人的献身度 | ← | 同上 |
協力度認知 | ← | 同上 | |
支援認知 | ← | 同上 |
コメント
- チームの献身度・反省性・阻害要因認知や、個人的献身度・協力度・支援認知は、implementation の指標に含めてよいのか。よいのだとすると、どういう定義(拡張的定義)を採用するとOKになるのか。
- 教師自体を「出先機関」とみなす? (cf. street-level bureaucracy)
- こういう定義拡張は、SLPの中身がわからないと適とも不適とも言い難いが、中身を調べる余裕がなかったのでお手上げ。(たとえば、「英語は英語で」政策の implementor として現場の教師を想定するのは妥当だろう)
「学校文脈変数でざっくり説明、ブラックボックス感が残る部分は、質的研究で補強」というデザインなんだろうけれど、学校規模や非オランダ語話者率みたいなマクロな変数よりは、行財政的な制約要因で説明したほうが個人的には好み。前者の分析は、政策実施分析等よりは、教育社会学的な相関関係記述研究みたいに見えてしまう。
問題設定の転用可能性
- 「制度的にある程度は拘束されているが、ある程度は自由な施策」全般に使えそう。小学校英語の先行実施なんかが典型。
- 寺沢 (2020) で教育特区(小学校英語)に認可された自治体の行財政的プロフィールを分析したときは、外国籍者比率は目立って効いていなかった。
- FYI: こういうデータが分析可能(私が知る限り、だれも論文化してない):第1回小学校英語に関する基本調査(教員調査),2006 | SSJDA Direct