- Kobayashi, Y. (2014). Gender Gap in the EFL Classroom in East Asia. Applied linguistics, 35(2), 219-223. http://applij.oxfordjournals.org/content/35/2/219
5ページ程度のごく短い論文だが、重要な指摘が多数ある。
語学教員は女性のほうが多い職業というのは日本だけでなく、他国でもよく見られる光景だが、「東アジア圏における白人ネイティブスピーカー英語教員」に限定するとそうではなくなるという。というのも、東アジア×白人という2つの変数が交差すると、男性優位の傾向が顕著になるそうだからである。ネイティブ英語教員業界では公然の秘密なのかもしれないが、自分は知らなかった。たしかに、いままで出会った人の顔ぶれを思い浮かべるとなるほどなと思った。
実は著者の過去の論文を多数 ――たぶん全部―― 読んでいる1んだが、著者はジェンダー不平等に関する問題にも人種的不平等に関する問題にもかなり批判的で、実際、こうした「男性支配」「白人支配」的な状況にかなりフラストレーションがたまっているんだろうなあということが数々のエピソードのチョイスから伝わってくる(深読みだったらすみません)。そういうこともあり、こうした「白人男性優位」の状況は、かなり批判的なトーンの強い語、たとえば「ホモソーシャル」 ――それはもちろん妥当な語の選択であると思う―― を用いて形容されている。
具体的には「白人男性優位」はどういう状況なのか、そして、なぜそれは東アジア圏に特徴的な現象なのか。ごく短い論文(短信)なので詳細な分析はないが、論点をいくつか提示して、今後の研究の展望を示している。これらは政策的な影響が大きいにもかかわらず、容易に正解が見出しにくい問いであり ――「東アジアは儒教文化圏だから」などという筋の悪い「正解」を別にすればの話だが――、非常に意義があると思う。
なかでも興味深かったのは、冒頭の統計である。JALT Conference の第1著者を、エスニシティ別・ジェンダー別に集計したところ、男性の方が圧倒的に多く、北米の英語教育学会と比較しても異様だとのこと。こういうのは、科学社会学的にも興味深いテーマだ。