こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

言語教育系学会のトレンド比較をした論文が出ました。(国内英語教育学会 × 海外英語教育学会 × 日本語教育学会)

今月発行された『関東甲信越英語教育学会学会誌』第37号に,私の論文「日本の英語教育学の特徴: テキストマイニングによる国際比較」が掲載されました。

手元のワードファイルをPDF化した非公式カラー版が以下です(Dropbox 共有リンク)。出版されたものと,内容は基本的に同一です1https://www.dropbox.com/scl/fi/jx1hsezsm8a63m8a56pnn/2023.pdf?rlkey=17tsgz9gyguiwzzfl9b2l6wyz&dl=0

概要

アブストを DeepL(+筆者自身の独自訂正)をかけたものが以下です。

本稿の目的は、日本における英語教育研究の特徴を明らかにすることである。この目的のため、本研究では、国内の5つの英語教育学会(CELES、JACET、JALT、JASELE、KATE)、2つの国際英語教育学会AsiaTEFL、TESOL International Association),そして,日本語教育学会の合計8学会の大会要旨を分析した。

本研究では、これまでの研究で一般的に用いられてきた解釈的なコーディング手法の代わりに、テキストマイニングに基づく内容分析を用いて、膨大なデータセットを処理し、国際比較・学会間比較を行う。

7,000以上の発表要旨を構造トピックモデルで分析した結果、日本国内の英語教育学会(CELES、JASELE、KATEなど)は、国際的な英語教育学会に比べて、言語分析(文法や認知メカニズムなど)に重点を置き、社会的文脈に基づく枠組み(言語学習者のアイデンティティなど)に重点を置かない傾向があることが明らかになった。また、国内の英語教育学会に所属する研究者は、日本の教育システムを前提とした枠組みを採用し、そのシステム外の現象にはあまり注意を払わない傾向がある。以上の結果を踏まえ、本稿では、英語教育研究における学術動向分析の今後の方向性について論じる。

図の抜粋

以下,分析内容がイメージしやすそうな図をいくつか抜粋します。

下の図は,学会ごとにトピックの出現傾向を計算して,それを対応分析で表現したもの。

学会 ✕ トピックの対応分析

ちなみに,◯が学会,▲がトピックです。

NKGは日本語教育学会の意味です。CELESは中部地区英語教育学会,KATEは関東甲信越英語教育学会,JASELEは全国英語教育学会の意味です(ドメ英語教育学会は見事に右側で固まっていますね)。トピック名はところどころ謎表記がありますが,こちらは本文を参照してください。


また,下の図は,学会間ではっきりした差がみられた9つのトピックに絞り,その出現度を図示したものです。

学会間で差が見られたトピック9個


  1. 印刷会社はとくに版組などしていないようで,Word版がそのまま誌面にのっている状態なので,構成もたぶんほぼ一緒です。