アジアバロメーターを使ってアジア30ヵ国の英語格差の程度とパタンを比較した論文が出版されました。興味がある方はメッセージくださればPDFをお送りします。
ドラフトバージョンは、ResearchGateに置いてあります。こちらはDM不要で読めます。
基本的には記述的な分析が中心です。ただ,一点,論争になりそうな論点として,既存の批判的英語研究の英語格差 (English divide) 言説に対してささやかな異議申し立てをしています。韓国の英語教育研究が典型ですが,ここ20年の批判的英語研究では,英語格差(英語教育および英語力による社会格差の増幅)が,揺るぎない真理のように扱われています。しかしながら,多くの先行研究は,事実(格差があること)と言説(格差があると言われている/懸念されていること)の区別が結構あいまいなまま,議論されています。
本論文で私は,既存の英語格差言説に反し,韓国の格差の度合いは,比較的マイルドであることを明らかにしています。そのうえで,韓国の英語格差は,その実態以上に,言説のせいで増幅されている可能性を示唆しています(第7節参照)。
なお,この増幅効果は,格差研究・批判研究のもつ逆説だと思います。「格差があるぞ!」と多くの人が叫べば叫ぶほど,事実がどうであれ,格差があることが自明視されるからです。しかも,「格差があるぞ!」の根拠が,「誰々も言っている」「社会問題になっている」というエピソード的な証拠に基づくことが多い質的事例研究においては,より注意が必要なポイントでしょう。
図
記述的な分析に関しては,とりあええず,図だけ見ても要点はわかると思います。
英語力とジェンダー,
英語力と教育レベル
英語力と職業カテゴリ(3水準)
英語力と居住都市規模
英語力と各社会階層変数の相関係数,箱ひげ図
相関係数をもとに30カ国を分類(階層的クラスタ分析)