こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

雑誌『英語教育』(戦後)の量的傾向をざっと見る

現在、「戦後(とくに終戦昭和期)の英語教育雑誌をとにかく読む」という(ひとり)読書会をやってますが、その関係で、雑誌『英語教育』(1952年刊行、研究社→大修館)の概略を確認しておかなければとおもい、まずは、量的に見ようと思ったのが以下の記事です。

『英語教育』の記事を「量的」傾向

『英語教育』別冊『英語教育 Fifty』の付録に、同誌のタイトル一覧という便利なデータがあるので、これをもとに分析しています。ただし、このデータは、抜けがけっこうあるので(投書などがごくまれだがカウントされていないことがある)ご注意を。


一号当たりの記事数

内容分析的な手法(つまり、ある語や概念の推移を量的に分析)を行う場合には、ある語の生起頻度(該当数)に注目するか、出現率に注目するかがまず重要になります。刊行直後(50年代初め)と現在では同誌のページ数はかなり大きな差があるので、頻度で比較するのは慎重になる必要があります。(ただし、昔のほうが、活字の大きさはかなり小さいので、字数で比較すると、差はある程度縮まるかもしれません)

とりあえず、記事数の推移をチェックすると、50年代〜60年代半ばまでは、徐々に記事数が増加している傾向がありますが、60年代後半以降で記事数の伸びはおよそ60前後でストップします。この点から、60年代後半以降であれば、頻度での比較もそれほど問題がないだろうと言うことがわかります。


「コミュニケーション」を含む記事

有名な事例(つまり、量的に分析しなくても、関係者ならみんな知っている話)に、「コミュニケーション」という語の浸透があります。分析する必要もないんですが、わかりやすい例なので、グラフにしてみます。

90年代から、伸びているのは、「オーラルコミュニケーション」という科目名および指導要領の文言に影響されて、という場合が多いでしょう。こういった文言は、政策の「ことばづかい」にも多分に影響されるので、必ずしも「コミュニケーションへの意識が増加した」ということの証左ではありません。