こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

日本人就労者がどれだけ英語を使っているかを推計した論文が出ました。

おことわり この記事の日付は2021年になっていますが、その後にアクセプトされた論文を含めるため2023年2月に加筆しています。


日本人就労者がどれだけ英語を使っているかを推計した論文が出ました。

  1. 寺沢拓敬 2021. 「日本人就労者の英語使用頻度 : ウェブパネル利用の質問紙調査に基づいて」『関西学院大学社会学部紀要』 http://hdl.handle.net/10236/00029843
  2. Terasawa, T. 2021. 'Web Survey Data on the Use of the English Language in the Japanese Workplace', World Englishes, 2021 (Online First).
  3. Terasawa, T. (2022) Does the pandemic hamper or boost the necessity for an international language? A survey on English use frequency among Japanese workers. International Journal of the Sociology of Language.  
  4. Terasawa, Takunori. (2023). How do Japanese workers experience and view international communication? A web-based questionnaire survey. Bulletin of the School of Sociology, Kwansei Gakuin University, 140, 149--169.

いずれも同じ調査プロジェクトをもとにした論文ですが、1番目、2番目、3番目は、2021年2月に行った第一次調査を分析したもの。4番目は2022年3月に行った第二次調査の分析です。

1番目と4番目はいわば速報版で、資料的性格を持たせています(「質問紙原本」と「基礎集計表」つき)。

2番目は、World Englishes パラダイムに合いそうな論点にフォーカスして、計量分析にくわえ、理論的・方法論的な議論をしたものです。

3番目は、英語使用がパンデミック前後で増えたか減ったかに注目した分析です。

自他ともに「国際人」を任ずる方々は、英語ニーズについて「多い」とか「いや少ない」と自由なことを言っていて久しいですが、実は、信頼に足る調査がほとんどない。その空白部分の一部を埋めようというのが本調査です。

結果の概要(図解)

以下の図が、2021年調査をもとにした推計結果です。以下の図は1番目の論文がベースです。

カテゴリラベルのアルファベットの意味は次のとおりです。

  • 使用言語
    • En: 英語使用
    • Jp: 日本語使用(外国人などを相手にした場合)
    • Tl: 翻訳・通訳ツール使用
  • 使用場面
    • Wk: 仕事での使用
    • Lif: 生活(仕事以外)での使用

棒グラフの「平均回数」は過去1年に何回使ったかの平均値、折れ線の「使用率」は、過去1年に一度以上使った人の割合です。

日本語使用・機械翻訳使用の頻度も

図にある通り、英語使用頻度だけではなく、以下の論点も調査・推計しています。

  • 1) 外国人相手の(いわば国際語としての)日本語使用頻度
  • 2) 機械翻訳の使用頻度
  • 3) 日本の就労者が仕事で英語を使う相手1

これらも頻度推計しているので、日本語教育機械翻訳(の普及過程)を研究している人にも読んでもらえたらありがたいです。

なお、これら3種の設問群は、関心がある方がいれば、共同研究も視野に入れています。気軽に声をかけてください(場合によっては調査データのシェアをいたします)。データ分析は当方でもできますが、理論的な点は専門家の助言がほしい領域です。というわけで「拡散希望」です。よろしくお願い致します。


  1. 英語母語話者(つまり母語話者との英語コミュニケーション) vs. それ以外の非日本語母語話者(つまり国際語としての英語使用) vs. 日本語話者(いわゆる日本人同士の英語コミュニケーション―会議に日本語を介さない人が出席している場合など)