発売から2ヶ月近く経過してしまいましたが、9月に以下の本を出しました。
- 亘理陽一・草薙邦広・寺沢拓敬・浦野 研・工藤洋路・酒井英樹〔著〕『英語教育のエビデンス――これからの英語教育研究のために』(研究社、2021年9月)
https://books.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-41105-3.html
私とエビデンス(個人的な話)
内容紹介は、出版社ウェブサイト(上記URL)にまとまっているので割愛しますが、本書の源流はというと、2015年の関東甲信越英語教育学会(@山梨上野原)でした。このとき、私は「英語教育学における科学的エビデンスとは?」 という発表をしたところ、フロアにいた酒井さん(当時はちょっと面識があった程度)に食いついてもらって、短い時間でしたが研究プロジェクトについて議論しました(私の記憶の捏造かも知れません)。また、もっと前に源流があったら、すみません。
その後、2016年に上記の編著メンバーを中心に科研・課題研究プロジェクトが立ち上がりました(現在は後続の科研に移行中)。本書はその成果物のひとつです(ただし啓蒙書の性格もあるので100%科研に依存しているわけではありません)。
私自身も2014年に書いた文章で、筆がすべって気軽に「これからはエビデンスが大事」みたいなことを書いてしまい、その後、それに流される形で、いろいろなエッセイ・論文を執筆することになりました。
実は、2014年時点にくらべると、現在私はかなりEBEEの話には警戒心があります。本書のなかでも書いてますが、エビデンスの話は技術論にフォーカスすればするほど楽観的に論じることができますが、科学論・学問論や学会組織論、教育政策論に軸足を置くほど悲観的になるという性格を持っている気がします。
で、勉強すればするほど、後者の論点の重要性を痛感するようになりますが、対照的に、議論の入り口として入門しやすいのは前者の技術論です。もうすでに、この種の「技術的に解決すれば結構OK」といった楽観的な論調が多いですが、「街灯の下で鍵を探す」だけの議論に陥らないか、批判的に読むのをおすすめします。