博士論文を無事書き終えたら、その成果を何らかの形で公表するのが一般的である。
というわけで、博士号をとった人が次に行う選択肢はおおざっぱに言って次の3つである。
- 博論をいくつかに分割して、学術雑誌の記事として公表する
- 博論を一部修正し、通常は出版助成を取得したうえで、学術書として刊行する
- 一般書として刊行する。(一般層を想定読者にするため、ふつうは大幅な修正をしたうえで出版)
もちろん「0. とくに何もしない」という選択肢もあっていいと思うが、ここでは除外。
「1」は自然科学系では主流だろう。また、海外には自然科学・社会科学・人文学を問わず「1」のタイプの地域もあると聞く。一方、日本の人文系で一般的なのは「2」だとされている。ただし、例外的に「1」が主流の分野も人文系にはある(言語学、心理学など――間違っていたらご指摘ください)。
日本の応用言語学・外国語教育研究は、学問レベルで見ればもちろん言語学・心理学の影響が強いのだが、「講座」に代表される制度の面では英文科・仏文科や教育学といった伝統的な人文社会系の影響も色濃く残る。なので、「1」と「2」のどちらかが圧倒的に優勢ということはないと思う。
私はというと「3」である。私は、出版助成による学術書刊行ではなく、一般書としての出版を選択した。
出版までの経緯を簡単に(いろいろ簡単でない部分もあるが)まとめると以下の様な感じになる。
- 2012年初め頃
- 出版社(X社)と博論出版の相談。その結果、出版が仮決定(ただし、まだ5割くらいしかできていない段階)
- 2012年8月
- 博論の下書き完成、その後博論審査委員会。
- 2013年3月上旬
- 博論最終審査合格*1
- 2013年3月中旬〜4月上旬
- 博論を章立てレベルから大幅に書き直す。そしてボリュームも減らす(その結果、約10万字削減)
- 2013年5月
- X社からの出版が白紙に
- 2013年6月
- 気を取り直して営業活動を再開。原稿はすでにできているので、それをもとにY社に出版の打診
- 2013年7月頃
- 出版決定
- 2013年8月〜9月
- 下書き原稿をさらに修正(さらに約2万字くらい削減)
- 2013年12月
- 初校
- 2014年2月
- 出版
↓その結果がこの本↓
「なんで英語やるの?」の戦後史 ??《国民教育》としての英語、その伝統の成立過程
- 作者: 寺沢拓敬
- 出版社/メーカー: 研究社
- 発売日: 2014/02/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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つづきは、以下。博士論文を出版する(その2、なぜ「一般書として出版」を選んだか) - こにしき(言葉、日本社会、教育)
*1:なお、博論提出・博士号取得は同年4月である。ほんとうは3月31日付けで修了したかったのだが手続き的な面でギリギリ間に合わなかった。結果、2013年3月満期退学、同年4月学位取得という微妙な経歴になっている。