こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

博士論文を出版する(その2、なぜ「一般書として出版」を選んだか)

先日のこの記事では、博論を一般書として出版するまでの過程をごく簡単に紹介した。
博士論文を出版する(その1) - こにしき(言葉、日本社会、教育)


では、なぜ「出版助成による学術書」という選択肢ではなく「一般書」として出すことになったのか簡単に説明したい。

博論執筆中に既に出版の話があった

最も重要な要因のひとつ。博論がまだ書き終わらない、だいたい5割くらいの状態のときに、一般書として出版の打診があった。

編集者に声をかけてもらった直接のきっかけは、ブログにアップしていた博論下書きである。私は、執筆のモチベーションを維持するために博論の一部を定期的にブログに載せていた。

たまたまそれが編集者の方の目に止まったのである。ブログがいわば「営業ツール」になった事例なので、博士課程の方も参考にして頂ければこれ幸い。

そうした事情から、博士論文自体も一般書のような文体で書くことにした。博士号取得後すぐに出版にまわすためである。なお、博論審査の先生から「文章がレトリカルに過ぎる」と怒られるかとも少し危惧はしていたが特に何も言われなかった。

出版までの時間的余裕がなかった

私にはあまり時間がなかった。したがって、出版までに比較的長い期間を要する「出版助成型出版」はあまり現実的ではなかった。

というのも私は2014年3月の段階でアカデミアを去る可能性がだいたい7割くらいあったからである。そういう点で、あまり気の長い計画を立てることはできなかった。

なお、出版助成を取得してから出版するまでには一般的に1年〜数年かかる(と思う)。たとえば学振の出版助成を勝ち取ったうえで出版しようとする場合、4月に博論提出したとして、そこから少なくとも1年半はかかると思う。博士号を取得した2013年4月の段階で、これほど時間がかかる手段を選ぶのはほぼ不可能だった。


以上は私にとって重要だった要因を述べた。次回は、もうすこし一般的な要因を考えてみたい。とくに、一般書として出版することのメリット・デメリットを紹介したい。