こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

英語教育政策論 の検索結果:

英語教育政策論 (3):英語教育政策をめぐるイデオロギー

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 一連の記事はこちら イデオロギー イデオロギー ideology とは 互いに類似した観念・アイディア (idea) を統合するもの(メタ観念) 特定の人間観・社会観に由来するものであり,同時に,その方向が「善である」ことを前提にするもの マルクス主義の用語として一般化し,そ…

英語教育政策論 (2):政策過程

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 一連の記事はこちら 政策過程の「理念型」モデル 英語教育政策の具体的な話に入る前に,まずは一般論から。 問題認知 →← 政策形成 →← 政策決定 → 政策実施 アジェンダ設定 政策過程とは(最狭義では)政策がどう作られていくかの過程。ただし,検討が始まる前段階(問題が認知され…

英語教育政策論 (1):政府の統制と現場の自律性

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 事前・事後統制:政府の統制と現場の自律性 政策における統制とは 政策は、文書や通達を出して終わりではない。現場が政策作成者の意図通りに完璧に動いてはじめて政策は感性するが、実際にはそんなことはありえない(「笛吹けども踊らず」問題)。 法制度的条件: 政府のお達しだからと言って…

Kaplan et al. (2011) 言語政策を失敗させる12の要因

…がする。なぜか日本の英語教育政策論議では意外とそういう声を聞かない(という印象)。「国語が大事」の声にかき消されているだけだろうか。 L2習熟には10年 It is a reasonably well-documented reality that it may take as long as 10 years to acquire fluency in a language, depending on the degree of difference between the…

原稿断片の墓場―2013年の小学校英語政策過程

… 一方、2013年の英語教育政策論議では、教育再生実行会議や産業競争力会議に委員として参加した財界人の存在感が非常に大きい。 たとえば、当時の教育再生実行会議の委員15名のうち、企業経営者は3名であり、しかもそのうちの2名は教育産業ですらない。 この割合は、これまでの中教審の英語教育関係の会議と比べると異様なほど高い。たとえば、前章で扱った外国語専門部会(2004-2007)には企業経営者は一人もいなかった。 議事録を見ても、ビジネスの視点から英語教育を論じる委員が非常に目立…

英語の先生による「英語教育政策の研究」

…だけど、英語の先生の英語教育政策論は新しい知見があることは稀なので、だいたい流し読みである。英語の先生による英語教育政策論のイメージは以下のような感じ。グローバル化!国際語!コミュニケーション!教育予算少ない!研修大事!国際語!日本人らしい英語!コミュニケーション!研修大事!アイデンティティ!コミュニケーション!CEFR!国際語!入試!諸外国すげー!研修大事!英語だけではダメ!国際語!文法も大事!コミュニケーション!日本文化!コミュニケーション!(後略) 言語政策研究は、研究…

水村美苗氏の主張は「エリート主義」的英語教育論なのか?

…き』を読んだ。7章の英語教育政策論の部分について。 水村氏は英語教育にいくつかの「ラディカル」な(ように見える)提言をしているが、彼女が仮想敵とする現状、および、それに対する対案との関係は、かなりわかりづらい。彼女の「現状認識→提言」というロジックは、流れるように書かれており、そういう意味で文学的な文章だが、無用な混乱を招くのも不幸なことなので、以下、「流れない文章」で整理しておきたい。 水村氏は、「英語の世紀」のなかで取りうるべき言語政策の「方針」を3つ提示している。そして…

教育研究としての「外国語教育学」

… 5.2 (不毛な)英語教育政策論 一方、教育政策論の面から、教育研究が参照できる(かもしれない)例を考えてみたいと思います。ここではひとつのケーススタディとして、公立小学校への「英語」導入をめぐる議論 ---特に、政策導入の可否をめぐるアカデミックな議論--- を取り上げてみたいと思います。 ご存じの方も多いと思いますが、公立小学校での英語教育を導入する上での教育的根拠は、90年代から現在までに大きな変遷を示しています。当初は、その目的の大きな部分を「スキル育成」が占めてい…