こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

戦前戦中の外国語科履修人口

江利川春雄著『近代日本の英語科教育史』(東信堂、2006)、p.333 より。各学校別の外国語科(ほとんどが英語科)の履修人口の表があるが、これを図にした。


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若干補足しておくと、戦前の学校制度において、英語を履修するかどうかは学校種別に大きく左右されていた。英語教育の中心は旧制中学・旧制高等女子・旧制高校旧制大学であり、いわゆる「エリートコース」だった。こうしたわけで「戦前の外国語教育」とおおざっぱに言われるとき、そのイメージはほとんどの場合、このエリートコースを前提にしていたのである。この図は、学習者人口という観点から見たとき、このイメージがいかに偏ったものかを示しているだろう*1。エリートコース以外の学校の英語学習者が、英語学習者全体に占める割合は、大正期でおよそ4割、戦時中で5割超であり、1942年度には「中学+高女」の総履修者数を追い抜いている。これほどの生徒が、英語を正規の学校科目として*2学んでいたのである。

*1:著者も指摘しているとおり、もちろんエリートコースのほうが授業時数や学習の質の面で優位だったのは事実である。

*2:つまり、ここの推計には通信教育などの課外学習者人口は含まれていない。