こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

精読・1951指導要領英語編試案(中学校・機能上の目標について)

「機能上の目標について」に注目する。

階層構造は以下のとおり

  • 第1章英語教育課程の目標
    • II.中等教育の目標から派生しこれに統合されるものとしての英語教育課程の目標
      • 2.中学校英語教育課程の目標
        • B.おもな機能上の目標


現在の『学習指導要領』とはちがい、この1951指導要領の分量はものすごい。この時期の指導要領は「正統」な行政文書ではないが、行政文書らしい文体で書かれており、似たような表現がダラダラと続くため、何度も意識が飛んだ。今後意識が飛ばないように、ここできちんと整理しておきたい。


「機能上の目標」はよく引用されるところだが、次のように、4技能(Listening, Speaking, Reading, Writing)別に似たような記述がだらだらと続く。

(1)「ことば」としての英語を聞いてわかる技能を発達させること。標準は中学校生徒の発達段階に適当であると一般に認められたものとする。したがって,
(a) 聴覚と口頭との技能を発達させるにあたって,習得した聞き方の技能が,(1)中学校の標準内において実用的価値あるものとなり,(2)高等学校の内または外においてさらに進んだ学習をしようとす る者にとって,健全な基礎として役だつものとなること。
(b)読み方または書き方の技能を発達させるにあたって,習得した聞き方の技能が,そのような技能の習得に必要な基礎および基準として役だつものとなること。


(2)「ことば」としての英語を口頭で表現する技能を発達させること。標準は中学校生徒の発達段階に適当であると一般に認められたものとする。したがって,
(a) 特に口頭表現の技能の習得を希望する生徒にとって,習得した技能が,(1)中学校生徒の発達段階に適当であると一般に認められた標準内において,実用的価値あるものとなり,(2)高等学校の内または外においてさらに進んだ学習をしようとする者にとって,健全な基礎として役だつものとなること。
(b) 読み方または書き方の技能を発達させるにあたって,習得した口頭表現の技能が,そのような技能の習得に必要な基礎および基準として役だつものとなること。

(3) 「ことば」としての英語を読んでわかる技能を発達させること。標準は中学校生徒の発達段階に適当であると一般に認められたものとする。したがって,
(a) 書き方の技能を発達させるにあたって,習得した読み方の技能が,(1)中学校の標準内において実用的価値あるものとなり,(2)高等学校の内または外においてさらに進んだ学習をしようとする者にとって,健全な基礎として役だつものとなること。
(b) 書き方の技能を発達させるにあたって,習得した読み方の技能が,そのような技能の習得に必要な基準および完成を助けるものとして役だつものとなること。

(4) 「ことば」としての英語を書く技能を発達させること。標準は中学校生徒の発達段階に適当であると一般に認められたものとする。したがって,
(a) その技能が,(1)中学校の標準内において実用的価値あるものとなり,(2)高等学校の内または外においてさらに進んだ学習をしようとする者にとって,健全な基礎として役だつものとなること。

つまり、

  • 1「聞き方」、2「口頭表現」、3「読み方」、4「書き方」

という順番で、ほぼ似たような記述がつづくので、これらをそれぞれXと置いて、まとめてしまえばいい。以下のようになる


  • X. 「ことば」としての英語をXする技能を発達させること。標準は中学校生徒の発達段階に適当であると一般に認められたものとする。したがって,
    • X.1. Xの技能を発達させるにあたって,習得したXの技能が
      • X.1.1. 中学校の標準内において実用的価値あるものとなり,
      • X.1.2. 高等学校の内または外においてさらに進んだ学習をしようとする者にとって,健全な基礎として役だつものとなること。
    • X.2. 読み方または書き方*1の技能を発達させるにあたって,習得したXの技能が,そのような技能の習得に必要な基礎および基準として役だつものとなること。


まだわかりにくいので、さらに定式化すると以下のとおり。


  • X. 技能の種類の明示;標準とするレベル(=中学校)の明示
    • X.1. 技能Xそのものの価値
      • X.1.1. 中学の枠内での実用価値
      • X.1.2. 学習継続者にとっての「基礎」としての価値
    • X.2. 技能Xが、「書きことば」の「基礎」になるうえでの価値

*1:「X=読み方」の場合は「書き方」のみ、「X=書き方」の場合はこの項はない。