こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

「プロ意識の高い教師」は本当に「プロ」なのか。



「教師としてのプロ意識」のような話も、人によって180度意味が異なる所がいつも気持ち悪い。

どんなことでも手を抜かず完璧を目指すのがプロだ

という意味で使ってる人がいるかと思えば、

どんなことでも報酬に見合った効果をあげるのがプロであって、完璧を求め過ぎるのはアマチュア

という意味で使う人もいる。

個人的には「プロフェッショナル」の原義に近いのは後者のほうだと思うんだが、前者の「できるだけ最善を目指す職業倫理」の意味のほうが一般的なようだ。


ただ、教員や医者やその他「人間」を相手にする職業の場合、報酬が明らかに不当な低さでも、手を抜くことが事実上不可能であり、結果的に「ボランティア」になってしまう場合が多い(とくに行政・経営者がきちんと予算を用意しない場合)。極端な状況だが、たまたま事故現場に居合わせた医者が「報酬出ないんだったらや〜らない!」と言って立ち去ったら目の前の人は死ぬかもしれないのである。


いずれにせよ、そのような構造的欠陥を「職業倫理」として粉飾するのは、筋が悪い言葉の使い方だと思う。「プロ意識」のような言葉は、言葉狩りしてしまったほうがずっとよい世の中になるだろう(笑)。