こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

「言語文化」の謎を追う!!!(大げさ)


「言語文化」という言葉がしばしば聞かれる。そのバリエーションは「英語文化」「日本語文化」等々。学術用語ではないと思うし、けっこう異なる使われ方をしているのでその意味を書き出してみる。


大雑把にいって、言語を論じる文脈で文化というとき、「文化」は次の3つの異なる意味で言及されているように思う。

(A) 慣習行動のうち言語に関するもの
例、あいづち、結論先行
(B) 言語表現のうち比較的威信の高いもの
例、文学作品
(C) 言語表現に埋め込まれた民族的・歴史的痕跡
例、good-bye →「神とともに」


ただ、言語と文化の関係を考えた場合、(A) の意味ははけっこう奇妙に響く。
なぜなら、「慣習行動」には特定の集団(とりわけ「エスニック集団」)に共通する(そして、それ以外の集団には見られない)行動という意味になるのだが、言語とエスニシティはふつう一対一対応しないからだと思う。


上記を踏まえた上での「言語文化」の暫定的定義:


1. 言語Xの言語的特徴に制約された、言語Xの話者の慣習行動
2. 言語Xのオリジンとなる話者集団が持っていた慣習行動が現代の言語X話者にも伝えられたもの
3. 話者集団と民族集団がある程度対応している言語における、その民族の慣習行動
4. 上記3のタイプの民族おいて、主に言語で表現された文学作品等


「日本の言語文化」という言葉はおそらく、今の定義の3番と4番を指していて、一方、「英語文化」(あまり聞き慣れない言葉だが)という場合、定義の1番と2番を指している場合が多い・・・はず。
ただし、1番のタイプの「言語文化」というものが実在するのかちょっと自信はない。