こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

反・文科省的な研究

Ask.fm の回答を加筆修正のうえ転載してしまうコーナー!
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質問

あまり詳しい分野とかは言えませんが、私の研究内容に対し、指導教員から、文科省の批判につながるかもしれないので避けたほうがいいのではと言われています。どう思いますか?指導教員もあまり詳しくないようなので明言しているわけではありませんが。ちなみに、私の研究内容は文科省を正面から批判しているわけではなくて、あくまでつながる可能性があるくらいの内容です。

回答

就職の心配でしょうか?その点でいえば指導教員の先生の心配は杞憂だと思います。「文科省を正面から批判する研究」をしている院生のポストが、その研究内容故に狭まったということはあまり聞いたことがありません。

いわゆる「御用学者」的な仕事はできなくなるでしょうが、教育研究において「御用学者的な仕事」は全体の5パーセントもないと思います。もっとずっと多いと感じるのは官製シンポジウムや「行政代弁」系の雑誌など「目立つ」場所で発表をしている研究者が多いからです。紀要や学会誌、国際誌などもっと「地味」な舞台で活躍している研究者はいくらでもいます。


就職という観点から慎重に考慮するべきは、文科省ではなくむしろ人事権を持ている中堅クラス(教授)に対する批判です。助教・准教授・名誉教授への批判ならまったく問題ないでしょう。


余談ですが、「文科省と闘う学者」みたいな自己演出をする研究者がたまにいますが、それがマクロでどういう帰結を持っているか考えて欲しいと思うことがあります。たしかに「闘う人」としてその人に注目が集まるので個人レベルでは合理的でしょうが、一方で、質問者さんのような心配をしてしまう人が現れる点でマクロでは非合理的です。「教育政策批判」のハードルを不当に高めてしまい、他の研究者(とくに若手や院生)が参入を躊躇してしまいます。その結果、その分野は徐々に衰退してしまうでしょう。