こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

自民党の英語教育振興政策案

私のツイッターTLで少し話題になっていた以下の自民党の政策案。


この政策案は、経済、福祉、外交と多岐にわたるものだが、そのなかの「教育」に関する以下の文書を見てみたい。


この文書、もう「はじめに」の部分から飛ばしすぎで、

自由民主党は、左翼思想に支配された日本教職員組合が教育現場で強い力を行使することを防ぎつつ…

と、反左翼・反日教組をうたっている。まえからこういう姿勢だったとはいえ、野党に転落して「反・民主党」がレゾンデートルとなった現在、それはより純化されているかもしれない。

同案では、日教組を批判しているのか、あるいは、そもそも教職員組合が力を持つこと自体を批判しているのか、よくわからない部分がある。教育関係者には常識だと思うが、教職員組合は「日教組」だけではなく、保守系の「全日教連」(例えば、栃木県ではむしろ多数派)もあるわけで、無用な「同士討ち」を避けるために一貫性がなくなっているのかもしれない。


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さて、英語教育政策に関する言及もあることはあるが、それほど大したことを言っているわけではない。

(5)留学生受け入れ、海外留学30万人計画の完全実行(資料8参照)

グローバル化に対応し、やる気のある学生を育てるため、最近、停滞している留学生の受け入れ30万人計画を更に進めると共に、海外に留学することも積極的に支援する。小学校から「話せる英語」を英語教育の目的とし、英語教育の飛躍的充実を図る。


留学関係の政策のなかに、小学校英語教育が入っているのは、もはやいろいろ感慨深い。

さて、「話せる英語」重視は、民主党の英語教育構想と大して相違はない気がする。公明党共産党の英語教育案というのはきちんと調べていないのでよくわからないが、どの党も英語教育政策に関してこのような大同小異だという印象はある。もしそうならば、その背後には「民意」があるわけで、「話せる英語」批判派にとってはかなり苦しいところだろう。*1

*1:なお、この「民意」は、英語教育に関するきちんとした情報提供(=説明責任)が行われた上での「民意」ではないので、「民意がこうだからこうすべき」という民意原理主義は、現状では導けない。