8月17日・18日に行われる関東甲信越英語教育学会・長野県大会で、以下のタイトルで発表します。
発表に先だって、予稿集原稿をアップします。
予稿集原本のPDF
当日長野県までいらっしゃることができない方でも、どうぞ遠慮なく質問・意見などコメント頂ければ幸いです。
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タイトル
日本の仕事現場は本当に「英語化」しているのか ---2000年代後半の社会調査の統計分析から
- キーワード
- 仕事と英語,無作為抽出調査,社会調査の2次分析
1. 研究の目的
本発表では、拙稿(寺沢, 2013)の問題意識を引き継ぎ、日本の仕事現場の「英語化」状況を、信頼性の高いデータをもとに明らかにする。近年、有名企業の英語公用語化が象徴するように、日本の仕事現場に英語の波が押し寄せていることはもはや既成事実として扱われつつあるが、これは社会全体に見られる普遍的な現象だろうか?それとも、単に特定の企業の「英語化」が過大にクローズアップされた結果に過ぎないのだろうか?この問いを検討するため、「日本人」全体から無作為に回答者が抽出されている日本版総合的社会調査(JGSS)の2次分析を行う。
2. データ
データはJGSS 2006年版A票とJGSS 2010年版A票である。いずれも、日本全国に居住する20歳以上89歳以下の有権者男女から無作為に回答者が選ばれている。回答の依頼はそれぞれ4002人、4500人に対して行われ、そのうちの59.8%, 62.2% から有効回答が得られた。同調査では、過去1年間の仕事での英語使用が尋ねられており(詳細は、寺沢 2013)、2006年調査と2010年の英語使用率を比較することで、2000年代後半の4年間の「英語化」状況が明らかにできる。
3. 英語使用率:2006 → 2010
過去一年間に仕事で英語を読んだり、聴いたり、話したりしたことが少しでもあると回答した人の割合は表の通りである。近年の「英語化」言説と相反して、2006年の英語使用率は2010年になると有意に減少している。これは、グローバル化に伴う「英語化」の進行よりも、リーマンショック(2008年)を発端とした不況のインパクトのほうが大きかったためだと考えられる。
2006年 | 2010年 | ||
---|---|---|---|
使った | 277 (21.0%) | 256 (16.3%) | |
使っていない | 1045 (79.0%) | 1313 (83.7%) | |
計(全就労者) | 1322 (100.0%) | 1569 (100.0%) |
- 2006年→2010年の間の増減: -4.7% (95%信頼区間: -7. 6% 〜 -1.7%)
- χ^2 = = 9.953, p = 0.001, φ = 0.059