先日,連続ツイート(以下が発端)したものをこちらにまとめます。
この「All in English は国の方針だから公立校は守れ」っ論は,とてもよくある誤解なので,ポイントを以下に解説します。(英語教育研究者でも政策が専門じゃない場合誤解している場合すらあります) https://t.co/u1n12nKwvS
— 寺沢 拓敬 (@tera_sawa) 2023年9月22日
「英語は英語で教えるは国の方針」の誤解
「All in English は国の方針だから公立校は守れ」論,たまに聞きますが,これはとてもよくある誤解なので,そのポイントを以下に解説します。英語教育研究者でも政策が専門じゃない場合誤解している場合すらあります。
1. 公立校(自治体立)は国の管轄ではない。
公立校がしたがうべきは,まずは地域(自治体)の判断
2. 学習指導要領はあくまで「告示」
国の方針とされるものは,学習指導要領という告示文書。告示とは,要するに,文科省の役人による作文のことである。我々の民意を直接反映しているわけではなく,したがって,法律なみの拘束力があるわけではない。
もっとも,役人が独善的に作文しているわけでもなく,民主的プロセスを経て発表されていることになっているので,相応のリスペクトはすべきだが,だとしても,法律ではまったくない。
3. 「法的拘束力」の守備範囲
学習指導要領の総体には法的拘束力があるとされているのは事実(ただし,明文規定はない。様々な教育裁判の結果,こういう判断になっただけ)。しかし,学習指導要領内の個々の記述に法的拘束力を認めるような見解は皆無(法令文じゃないので当然)。あくまで総体としての拘束力があると言ってるだけ。
4. 個別の記述を法律の条文のように誤読する愚
学習指導要領の「授業は英語で行うことを基本とする」という記述は,明らかに個々の記述の範囲のものであり,法的には個々の教員に守らせるような拘束力は一切ない。そもそも,当該の記述は「~を基本とする」であり,「英語のみで教えなければならない」とは書かれていない。
5. 指導要領の守備範囲
蛇足ついでにいうと,学習指導要領は,総体としては,国公立学校だけでなく私立学校も拘束するので,「学習指導要領の言う通りにする気がなければ,私学に行け」も荒唐無稽な主張。