こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

耳塚寛明 (2007). 「小学校学力格差に挑む だれが学力を獲得するのか」『教育社会学研究』第80号 pp.23-39.

学力低下・学力格差の社会学的研究:レビューとその問題

  1. 学力を規定する要因はいずれも仮説的
    • 決定係数の小ささ
    • 変数の質のレベル
  2. 家庭背景についてが、子どもによる回答に基づいており、データの信頼性に疑問がある

+調査対象エリアの問題

→これらの問題を克服するための本研究のデータ:JELS-2003

インプリケーション:ペアレントクラシーとの関連から(Brown, P. 2005.)

  • 父学歴が学力を規定要因するのはたしかだが、Cエリアにおいて、家庭的背景が学力に対する決定的な影響力を持つとはいえない→日本の教育におけるペアレントクラシーについて、限定的な見方

現代日本の社会は不平等な社会である。しかし人々は結果が不平等であるだけではこれを不満に思わない。メリトクラティクな社会では、人々が能力と努力を平等に競えるよう、「機会の平等」化が社会を維持する前提となる。だからこそ人々は、平等な競争の結果としての不平等を、正当な不平等として黙受できる(p.33)

  • 学力格差はもはや教育問題ではない。社会構造自体に由来する問題である*1

     ↑
     ↓

  • 教育界がなすべきこと
    1. 格差是正に必要な資源(人、モノ、金など)の投入
    2. 私立効率のギャップ
    3. 丁寧な底上げ*2

*1:この辺の議論は、小学校英語教育導入と格差・機会均等の関連を論じている議論に、決定的に欠落しているものであると思う(寺沢コメント)

*2:このあたりの議論を小学校英語に適用すると、「格差是正は、中学・高校における課題となる」と導ける