「国際化」をめぐる日本の言語教育政策が、いかに強くナショナリズムを反映したものだったか、政策文書の検討を通して明らかにした論文。俎上にのせられているものは、主に、英語教育、そして(日本語話者ではない人のための)日本語教育。分析をめぐるキー概念は、論文タイトルにもあるとおり、「日本人論」である。
想定読者は、「国際誌」という性格を反映してか、日本の事情にあまり明るくない人だと思われる(ここ最近、論文ログを書きはじめてから、同じことばかり書いている気もするのだが・・・)。国際化をめぐる日本政府の言語政策がナショナリズムを強く志向したものだということは、日本をフィールドにする言語政策研究者であれば常識の部類に属する知見だと思うのだが、そうした知見に不慣れな読者にもわかりやすいイントロダクションを書いた、というところだろうか。
そういう点もあり、単に自分がきちんと読めていない可能性は多分にあるのだが、先行研究との関係がよくわからない。そもそも先行研究レビュー/先行研究批判にあたる節がないので、少し不親切な印象を受ける。
あと枝葉末節の部分だが、
The perceived homogeneity is an ideologically constructed worldview rather than an accurate reflection of the nature of Japan, ignoring the presence of both indigenous minorities, such as the Ainu, the Burakumin and the Ryukyu Islanders, and also immigrant populations.(p.34, my underline)
何の留保もなく上記の表現があるのだが、被差別部落民が「異民族」であると自他共に規定されているかのように理解されかねない記述*1なので、表現のしかたにもうすこし工夫が必要だと思った。
章立ては以下の通り(節番号はてらさわが勝手にふった)
1. Introduction
2. Language-in-education Policy as Text and Discourse
3. Ideological Positioning in Post-war Japan
3.1. Nihonjinron
3.2. Language-in-education policies for internationalisation
3.3. Discourses of interculturality in foreign language education
3.4. Language spread policy
4. Conclusion