- 作者: 保城広至
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2015/03/27
- メディア: 単行本
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読んだ。たいへん勉強になった。方法論(メソッドのハウツーという意味ではなくて、メソッドをめぐる認識論、メタ・メソッド)に興味がある人はお勧め。
メイントピックは、歴史学と社会科学(政治学や社会学)の緊張関係をいかに解消し統合するかという点である。大雑把に言えば、歴史をミクロに見る傾向がある歴史学には「木を見て森を見ず」という問題を、歴史をマクロに見る傾向がある社会科学には自分の思い描いたストーリーに合う史実ばかりを引っ張ってくる恣意性の問題をはらむという。
その点で、本書のメインターゲットは歴史的事例を取り扱う社会科学の研究者・院生などだが、そうでない人文社会系の研究者・院生にも「優れた問いの立て方」という点で得るところが大きいように思う。
たとえば、「イージーケース」と「ハードケース」の区別(p. 77)は覚えておいて損はない。イージーケースとは、特定の仮説が簡単にあてはまりそうなことがあらかじめわかっている事例であり、ハードケースは反対に一見するとうまく当てはまりそうもない周辺的な事例である。結果が最初からほぼわかっているような事例を検討したとしても鋭い分析とは言えない。むしろ、逸脱的な事例でこそうまく説明できたときこそ、切れ味が鋭い分析として評価される。自分の研究課題のハードルを自分が手に負える範囲でできるだけ高く設定するべしという指摘は、歴史を取り扱わない分野にとっても重要だろう。