2016-11-07 1章: Introduction. (Horiguchi, Imoto, and Poole. eds. 2015. Foreign Language Education in Japan. Sense Publishers.) 昨年冬に出たこの本。Foreign Language Education in Japan: Exploring Qualitative Approaches (Critical New Literacies: the Praxis of English Language Teaching and Learning)作者: Sachiko Horiguchi,Yuki Imoto,Gregory S. Poole出版社/メーカー: Sense Pub発売日: 2015/11/27メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 某誌で書評を頼まれて、実はけっこう締切が近づいているので、ここに読書ログをアップしていく。 追記(ログの一覧) 2章: 日本語補習校、現地と文科省との板挟みの中で - こにしき(言葉、日本社会、教育) 3章. 英語教科書執筆をめぐるアイデンティティポリティクス - こにしき(言葉、日本社会、教育) 5章. 日本の大学語学教育は、なぜヨーロッパ共通言語参照枠(CEFR)を受け入れたのか - こにしき(言葉、日本社会、教育) 8章. 彼女たちのネイティブライクな発音はなぜ日本人発音に変わったのか - こにしき(言葉、日本社会、教育) ちなみに、この本、ざっと読んだ限りではかなりおすすめ。書名の通り、日本の外国語教育をテーマにした論文集だけど、注目スべきは、ほとんどの章を人類学者か、すくなくとも人類学的なトレーニングを受けた応用言語学者が寄稿している点。日本の英語教育学(JALT含む)では質的研究 and/or フィールドワークが流行りはじめているが、個々の論文を読んでも多くの場合「うわあ・・・きついな・・・」という印象しかない。人類学者・人類学の院生にとってはごく当然のような「フィールドワーカーとしての覚悟」が感じられるフィールドワークはあまり読んだことがなく、多くはお手軽なインタビュー・お手軽な(授業)参観といった印象。まあ、「お手軽」研究になってしまうのは「質的研究の体系的トレーニングを受ける機会がないまま、学位取得のような差し迫った目的に対応せざるを得ないため」という構造的問題があるからだろう。前述の通り、この本は人類学者が書いてるので当然ながらそういう「だらしなさ」が伝わってこなくて読後感がとても良い。以下、第一章(Chapter 1. Introduction by Horiguchi, Imoto, and Poole の要約) 1.1. Voices from the field 本書のテーマ:complex and intricate relationship between the "local" and the "global" 1.2. The Japanese Case. ・本節(日本というコンテクストの説明)のキーワード -Nationalism and Internationalism -Global standards in education -The symbolic nature of English-language education・流れ マクロ社会構造としてのネオリベ的グローバリゼーション ↓ ELT Policy ↓ 公教育における英語教育(→英語格差、そして英語力という文化資本も含む)・日本の英語教育におけるグローバリゼーションは、ナショナリズムの色彩が強い(「グローバル化の荒波に生き残る強い日本人」の育成)・「日本の英語教育は失敗 failure」言説の果たす役割 1.3. The cultural debate surrounding foreign-language education in Japan ・Cultural debates ・「日本の英語教育のここがダメ!」みたいな話は昔から散々言われてきた:e.g. Loveday (1996) ・多くの人が「日本のダメな理由」としているものは実際、他国の高等教育にも当てはまる ・overgeneralization: 日本人/アジア人のメンタリティに関する決めつけ(→Oxford et al. 1992) 1.4. Calls for qualitative, collaborative approach メソドロジー関連の議論・Qualitativeを基本線とする。ただし、positivistic / processual という2つの異なるアプローチが同居しており無理に統一することはしていない・Powerの問題、すなわち Critical approach を重視・Dialogue between Applied Linguists and Anthropologists・「海外でトレーニングを積んだ日本人研究者」と「日本で活動する外国人研究者」が寄稿。「生活的出身地」と「学問的訓練を積んだ場所」が食い違う、つまり Japanese/non-Japanese の境界を超えるようなauthorshipが特徴