こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

津田幸男(2006)『英語支配とことばの平等』

英語支配とことばの平等―英語が世界標準語でいいのか?

  • (p.61)小学校の英語教育→日本語汚染論(...宮岡(2002)を引きつつ)*1
  • (p.75)「なぜ文化支配はいけないのか」:文化は精神的財産であり、市場経済の論理に組み込んではいけないから
  • (p.130)非英語話者の実業家と英語話者の労働者の会話→英語話者のほうが階層的に下であっても優位に立てる:「いかなる金持ちや権力者でも、英語が出来なければ、この権力構造の最下層に落とされるのである(p.131)」
  • (p.144)別府ハルミ「日本人のセルフオリエンタリズム」「英語支配システム」(別府, 2005)*2
  • (p.146)「日本では日本語で」のメリット5点
    1. 英米人の英語信仰を崩す
    2. 日本人の英語信仰を克服できる
    3. 英語コンプレックスの解消の助けとなる
    4. 対等関係が築ける
    5. 外国人による日本語学習の促進
  • 対案:「一般教養英語を廃止したあとに」
    1. 外国語教育の多言語化
    2. 専門英語教育の充実
    3. (日本人に対する)日本語教育の充実
    4. 国際理解教育の充実:平等、自由、人権などの普遍的価値、偏見差別の克服、地球市民意識
    5. 文法を教える

*3

*1:宮岡伯人 (2002). 「消滅の危機に貧した言語―崩れゆく言語と文化のエコシステム」宮岡・崎山編『消滅の危機に瀕した世界の言語』明石書店, p.18.

*2:別府春海 (2005). 「英語支配とセルフ・オリエンタリズム」津田編『言語・情報・文化の英語支配』明石書店 pp.36-43.

*3:「コミュニケーションの平等」といったとき、それは「形式的」な意味合いが強い。コミュニケーション機会の均一化、あるいはコミュニケーション可能性が均一に開かれている、という意味合いに近い