こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

英語教育政策論 (3):英語教育政策をめぐるイデオロギー

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 一連の記事はこちら イデオロギー イデ…

対応分析 ca() の出力を maptools() で自動的に描画するR関数(カテゴリ数が多い集計表向け)

対応分析 ca() の出力をデフォルトで出力しようとすると,カテゴリ数が多い集計表だと字が重なって何がなんだかわからなくなります。 # Rデフォの swiss データを使った描画 res.ca <- ca::ca(swiss) plot(res.ca) これを解決するためにmaptools()が便利です…

英語教育政策論 (2):政策過程

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 一連の記事はこちら 政策過程の「理念…

PC、買い替えて最初に入れたソフト

PCを買い替えたのでメモ(以前の状況(5年前)) Adobe Acrobat Aspell(新しい秀丸ではWin10以降の標準辞書を使えるので不要。設定をen-USではなくen-CAにするとブリティッシュスペリングにも対応) CCleaner Open Shell Dropbox DeepL desktop Evernote Fi…

英語教育政策論 (1):政府の統制と現場の自律性

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 事前・事後統制:政府の統制と現場の自…

奈良教附属小「代名詞の指導不足」という意味不明

一昨日,奈良教育大学附属小学校の「不適切」な教育課程が,フジサンケイ系のメディアで報道されました。 大半に「国歌」指導せず、道徳は全校集会で代替 国立奈良教育大付属小、法令違反教育常態化 - 産経ニュース それを受けて,昨日,学校側が記者会見を…

「日本人就労者の英語使用調査 2021-22」サイトを開設しました。

以前に行った「日本人就労者の英語使用調査 2021-22」のウェブサイトを開設しました。 https://english-use-in-japan-survey.jimdosite.com/ 調査開始直後から,以下のブログページで調査の概要を説明していました。 terasawat.hatenablog.jp しかしながら,…

言語経済学と言語能力の商品化:日本における英語力の賃金上昇効果を中心に

※以下は,こちらの原稿の下書きです。 1. はじめに 本稿では、言語の商品化を構成する諸現象のうち、言語能力に注目する。つまり、「言語能力の商品化」を検討する。 言語の商品化と一口に言っても多様な現象を含む。ただ、諸現象が必ずしも厳密に区別されて…

批判的応用言語学と権威主義(あるいはミーハー志向)

批判的応用言語学の「批判的」とは,狭い意味での「批判的思考」(いわゆるクリシン)を意味するものではなく,あらゆるタイプの観念・知・体制に対する根本的な批判です1。(近代を特徴づける学問知,言語観,社会観,文化観,教育観 etc.) しかし,なんで…

木村 2021「ポストモダン言語論を問いなおす」論文,読後メモ

先日のこちらの読書会 での論文メモ。 非常に示唆に富む論文で,考えたいことが山のように湧いてくる素晴らしい論文でした。以下にダラダラと書いていますが,個人的にもっとも響いたのは,「自明なことをなぜわざわざドヤ顔で言うの?」という話です。これ…

メモ:科学的英語学習論における「科学的」の2つの意味。

A. 既存の科学との連続性 科学としての権威が高いほかの学問(典型的には自然科学,ただしメソドロジー学問[統計学等]は除く)と何らかの接続をすること B. 手続きの洗練度 データに基づく因果推論,および,変数作成の手続きの透明化 ↓ ↓ ↓ Bあり Bなし A…

お知らせ:修論指導に関して

私(寺沢拓敬)は,2024年度から,関西学院大学大学院言語コミュニケーション文化研究科における修士学生を受け入れるようになりました。いわゆる「修論の指導教員」という意味です。私の研究室で修士学生として研究を希望される方は同研究科受験をご検討く…

「日本人の英語力は87位」という怪しいランキングを吹聴する人がいますが、マスメディアや識者は安易に飛びつかないようにして下さい。

お断り:この記事は,1年前のほぼ同名記事を,ごく一部に加筆したうえで,再掲したものです。 怪しい英語力ランキングの季節 11月は,英語教育関係者にとって頭が痛いニュースが流れる時期です。 それは,「日本の英語力は世界で××位!また下がった!えらい…

(追記:録音アップしました)EF英語能力指数2023発表直前緊急スペース開催

後日談(追記 2023年11月18日) 無事にスペースが終了しました。録音がありますので,様子を知りたい方はお聞きください。途中で音声トラブルが発生し,前半と後半にわかれてしまいました。 前半:https://twitter.com/i/spaces/1dRKZEwbRerxB?s=20 後半:ht…

「日常的に英語が使われていない日本では,教室内でこそ英語をできるだけ使うべきだ」について。

(1)「日本では英語はあくまで外国語。学校外での英語の接触量が少ないので,教室ではできるだけ英語を話して,インプット総量を増やすべきだ」 という意見をよく目にする。(論文でも目にした) しかし,この理屈は変。 同じ出発点から, (2)「日本では英語…

「英語は英語で教えるのが国の方針だから公立校教員は守れ」論の誤解

先日,連続ツイート(以下が発端)したものをこちらにまとめます。 この「All in English は国の方針だから公立校は守れ」っ論は,とてもよくある誤解なので,ポイントを以下に解説します。(英語教育研究者でも政策が専門じゃない場合誤解している場合すら…

【ご報告】「#英語業界のおかしなランキングを考える会」

このたび,「英語業界のおかしなランキングを考える会」を立ち上げました。 趣旨は下記のサイトにありますが,要するに,EF英語力ランキングやTOEFL国別ランキングを取り締まる有志の会です。 会員は随時募集しています。 英語業界のおかしなランキングを考…

言語教育系学会のトレンド比較をした論文が出ました。(国内英語教育学会 × 海外英語教育学会 × 日本語教育学会)

今月発行された『関東甲信越英語教育学会学会誌』第37号に,私の論文「日本の英語教育学の特徴: テキストマイニングによる国際比較」が掲載されました。 手元のワードファイルをPDF化した非公式カラー版が以下です(Dropbox 共有リンク)。出版されたものと…

英語教育実施状況調査に対する批判記事(『AERA』 2023年10月2日号)

本日発売の『AERA』 2023年10月2日号で,文科省「英語教育実施状況調査」を正面から批判した記事が掲載されています(私も取材を受けました)。 タイトルは, 正しい英語力測れない はりぼての「調査」 です。 私が知る限り,同調査に対する批判記事は,大手…

日本の英語教育:どう評価し,どんな未来像を描くか?(その2)

こちらの記事の続き。 後手後手の改革は? とはいっても,近年,日本でも英語教育改革が進んでいる。 こうした改革の波は,国内の社会条件の変化というより,「よその国がやっているから日本も」といった他律的な理屈の結果だと思われる。こうした後手後手の…

日本の英語教育:どう評価し,どんな未来像を描くか?(その1)

英語教育政策を研究してきて20年近くになるが,「日本の英語教育は成果をあげていない,これではダメだ」という決まり文句を食傷気味になるほど耳にしてきた。 こうした主張には,たいてい,同じく紋切り型の処方箋――たとえば,「文法を教えるのをやめて会話…

うちわこそ人類の偉大な発明

「バッテリー式モバイル扇風機は人類の偉大な発明」と言ってる人がいた。うちわを使ったことがないんだろうか。うちわこそ人類の偉大な発明です。 うちわの凄さに気づいてからというもの,モバイル扇風機を使っている人に「うちわのほうが,風量が数倍~十数…

ChatGPT and super-diversity/postmodernist applied linguistics

ChatGPT の英文出力を初めて見た時,「あ、これ、複雑系・スーパーダイバーシティ系・ポストモダン系の応用言語学の論文でよくみた感じの文章だ!」という変な感覚に襲われた。 「言語現象は静的なものではなく動的なシステムだ」「社会との複雑な相互作用を…

韓国の英語熱とネオリベラル主体

以下の本を読みました。 Park, Joseph Sung-Yul. (2021). In Pursuit of English: Language and Subjectivity in Neoliberal South Korea. Oxford University Press. 本書の概要は,出版社のウェブサイト にあるとおりだが,さらに要約すると,韓国の英語学…

学会時のマイクロ・ミスインフォーミングに困っているという話

マイクロ・ミスインフォーミング (micro-misinforming) というのは,私がいま造った言葉。マイクロアグレッション (micro-aggression) を意識したもの。 意味は,学会発表等で,発表者がつかみとして「ちょっといい話」をするんだけど,それが明らかに間違っ…

ポッドキャスト出演:英語教育実施調査の怪

英語教育2.0ポッドキャストに出演し,楽しくお話させていただきました。 最初から最後まで、怪しい英語教育ランキング1の話です。 しばらく前から「今年こそやります!」と言いつつ一向に始動しない「怪しい英語教育ランキングを撲滅する会」の話もしていま…

言語政策における量的研究 (5):トピック、手法

この記事の続き 言語政策における量的研究 (4):因果推論 - こにしき(言葉・日本社会・教育) 5. 量的研究が扱う言語政策的トピック 本節では、どのようなテーマで量的研究が使われるかを見ていこう。もっとも、適不適はさておき、あらゆる現象は数値的に要…

言語政策における量的研究 (4):因果推論

この記事の続き。 言語政策における量的研究 (3):一般化=母集団推測 - こにしき(言葉・日本社会・教育) データを数値化するもうひとつの利点が、適切な手法を用いれば、統計的因果推論が可能になることである。統計的因果推論とは、文字通り、統計的に因…

言語政策における量的研究 (3):一般化=母集団推測

この記事の続き。 言語政策における量的研究 (2):大量観察 - こにしき(言葉・日本社会・教育) 量的研究の長所としてしばしば一般化、つまり多数のケースを検討することで母集団の値が推測できることが言われるが、これは誤解なので注意してほしい。手元に…

英語使用・英語観に関するウェブ調査の報告書が出ました

Terasawa, Takunori. 2023. How do Japanese workers experience and view international communication? A web-based questionnaire survey. Bulletin of the School of Sociology, Kwansei Gakuin University, 140, 149--169. http://hdl.handle.net/10236…